鬼との共存を考える「桃太郎!」 流山子どもミュージカル20周年記念公演は歌人・東直子さんのオリジナル脚本

林容史 (2023年4月3日付 東京新聞朝刊)

流山子どもミュージカルの劇団員たち=いずれも千葉県流山市で

 千葉県の東葛地域の小中学生・高校生が所属する流山子どもミュージカルの第19回公演「桃太郎!」が5月14日、流山市文化会館ホールで上演される。2003年の劇団発足から今年で20周年を迎える。35人の劇団員が記念の公演に向け、猛レッスンで作品の仕上げに掛かっている。

小中高生の劇団員35人 プロが指導

 昨年7月、定期公演の幕が下りると、早速オーディションで配役を決め、9月には今作のレッスンを始めた。毎週金曜の夜、流山市生涯学習センターで、プロの講師に振り付けや歌唱の指導を受けながら全体練習を重ねている。また、地区の公民館で、上級生が下級生たちを演技指導する自主練習にも取り組んできた。

 今回、上演する「桃太郎!」は、これまでも劇団の脚本を手掛けている歌人の東直子さんのオリジナル。桃から生まれた桃太郎は優しくて力持ち。けれども村の子どもたちに「バケモノ」と意地悪をされる。桃太郎たち一行が鬼退治に向かった鬼ケ島では、見た目の違いで差別され、人間に山を追われて復讐に燃える鬼姫ら鬼たちが迎え撃つ…。

講師から指導を受けながら作品の完成に向け練習する子どもたち

 主役の桃太郎役で、今春、千葉県立松戸高に入学する山口希実(のぞみ)さん(15)は「みんなが知っている、桃太郎が悪い鬼を懲らしめる童話ではなく、人々と鬼たちの関わりを表現している。どうしたら鬼たちと共存できるか、一緒に考えて」、同じく主役の私立二松学舎大付属柏高2年に進級する吉田玲奈(れいな)さん(16)は「桃太郎も鬼たちもつらい思いを背負っている。憎しみだけでは生きていけない。分かり合うことの大切さを訴えたい」と力を込めた。

元劇団四季の俳優が設立 存続危機も

 劇団四季を退団した俳優の青砥洋さんが1993年、「ミュージカルを創る喜びを子どもたちに」と児童劇団「大きな夢」を設立。流山子どもミュージカルは、その6番目の支部として発足した。

 一時、ミュージカルに熱中する子どもたちが少なくなり、団員が9人まで減って存続が危ぶまれた時期があった。新型コロナでは2020年の定期公演が中止になり、活動はオンライン上に限られた。現在は流山を中心に松戸、柏、野田、我孫子各市に団員がいる。今回、初めて小学1~高校3年の全学年がそろい踏みする。

 劇団の広報を担当する宮本麻里子さんは「地域の人たちが本格的なミュージカルに触れる機会の一つになればと旗揚げした。舞台に立つ子どもたちにとって、たくさんの仲間と一緒に頑張った経験は貴重で、学校を飛び出して広い世界を見るチャンスにもなっている」と話す。

「桃太郎!」配信チケットも

 「桃太郎!」は2回公演で昼の部は午後0時半、夕方の部は午後4時半から。前売り2000円、当日2500円、配信チケット2000円(配信期間は5月25日~6月1日)。4月15日から一般販売する。申し込みは販売サイト、問い合わせは、流山子どもミュージカル=電話050(6867)7954=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年4月3日