僕はママからパパになった〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉

(2022年7月1日付 東京新聞朝刊)

 うちには「ママ」がふたりいた。四男は、妻のことを「ママ」とよんでいるけど、僕のことも「ママ」とよんでいた。

 そのうちに四男も「こっちはママっぽくないな」と感づいたのか、僕のことを「マパ」とよびだした。おしい。あと半分。

 その後、兄たちの「このひとは『パパ』だよ。いってみて」のレッスンが効いたのか、先月、晴れて「パパ」になった。

 パパを覚えた四男は今、そのほやほやの脳みそに、あらゆる情報をインプットする時期らしく、見えるもの全てを指さしては、「こうは?(これはなんですか?の意)」とひたすら聞いてくる。

 このまえ公園に行った四男は、海パンいっちょで日光浴しているおじさんを見つけると、僕がそこだけは避けようとしているのをあざ笑うかのように、にじりよっていって指さし、「こうは?」と聞いてきた。

 「これは、肌を焼いているおじさんです」と答えるわけにもいかないし、おじさんも指さされて気まずそうだった。

 とまあ、「あ! もうあかちゃんじゃなくなってる」ってことがよくある今日この頃です。

 そう言えば最近、国語の教科が苦手な長男は、妻の勧めで東京新聞の「筆洗」の音読をはじめた(掲載時まで続いていてほしい)。

 でも、まだ知らない漢字も多いみたいで、いつも読み方を聞いてくる。このあいだも「この字は『おとうさん』? 『おとっさん』?」と聞いてきたので、「お父さん」ぐらい簡単な漢字は、すらすら読んでや、と内心思いながら新聞を見てみると、長男は「お土産」を指さしていた。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。11歳、9歳、5歳、1歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。