「パパ、痛くないよ」予防接種で感じる息子の成長〈清水健さんの子育て日記〉37
お世話になった先生たちに囲まれて
痛くなんてないよね? 息子とふたりで顔を見合わせてうなずく。インフルエンザの予防接種。どれだけ強がっていても、ドキドキしているのがわかる。でも強くなった。自分が終わると、「パパ、痛くないから大丈夫だよ!」って僕をも安心させてくれる。
息子が生まれた場所、病院で、いつもの先生、いつもの看護師さんに囲まれての予防接種。母子手帳をチェックしている時、妻の字を見つけた。そんなことで切なくなったりする僕もいるけど、こうやって、お世話になった先生たちに息子の成長を見せることができるのがうれしい。
講演会の後、泣きながら告白されて
先日、ある中学校での講演会後、代表挨拶で女子生徒がほとんど誰にも話していなかったことを話してくれました。幼い頃に父親を病気で亡くし、幼稚園のお迎えも遅かった。お母さんはいつも忙しそうにしていた。泣きながら、でも、すごくうれしそうに、「寂しい気持ちもあったけど、私は、そんなお母さんを世界で一番、尊敬しています。お母さんが大好きです」。
別の講演会では、僕が会場から出ようとした時に、一人の女性が駆け寄ってきて、「私、お父さんがいません。寂しかったです」と泣きながら話してくれました。ずっと我慢していたんだと思う。誰かにあえて言う話でもない。でも、こうやって話したい時に話せる。こういう場所が一つでも増えればいいなと思う。
どんな背中を見せられているだろう
決して、息子に「お父さんはすごい!」と言ってもらいたいわけではない。でも、女子中学生の挨拶を聞いて、僕はどんな背中を、息子に見せられているんだろうかと考えました。仕事で疲れて、ついソファでウトウトしてしまう、そんな姿を見せてしまう時もある。そんな僕に「パパ、お布団にいこう。風邪ひいちゃうよ」と小さな声で起こしてくれる、優しく育ってくれている息子が隣にいます。
もうすぐ、2回目のインフルエンザの予防接種。またふたりで痛くなんてないよね!って言い合うんだろうと思う。こういう機会がないと、今はなかなか会えないけど、僕が心から尊敬する先生に、息子の成長を報告できる時間。息子を初めて抱っこしてくれた先生。妻の闘病中、僕の悔しさや不安を、大きな心で、何度も受け止めてくれた先生。もう注射もへっちゃら(?)になった息子。泣いて泣いて、すごく大変だった、妻と一度だけ一緒に行けた予防接種を、成長した息子の姿が思い出させてくれます。 (フリーアナウンサー)
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