悪気のない「お母さんと来ますか?」に息子は…〈清水健さんの子育て日記〉47

(2022年12月16日付 東京新聞朝刊)

息子と訪れた3年ぶりのお祭りで

息子の「初めて」僕の方が緊張

 緊張しながらも先生の指示通りに口をあけたり、口をゆすいだり。痛くなったら手を上げてね!と言われていたけれど、上げるはずの手は、横になった体の下で握りしめられている。その姿を見ていると、なんだろ、たまらない気分になった。親だなって。

 初めての歯の治療。何か抵抗があるよね。その気持ち、すごくわかる。僕も苦手だった歯医者さん。甘い親なのか、息子より緊張して、「初めて」の、その姿を見ている自分がいました。

講演会の後 届いたメッセージ

 講演会の後に、話しかけていただいたり、メッセージをいただいたりすることがあります。「病気がわかってしまいました」。おなかには赤ちゃんがいて、今、病院の先生から、出産か治療か、宿題が出ているとのこと。大きな転移はなく、治療しながらの出産も可能、でも、先生によると、最善の方法ではないそうです。不安と決意がつづられていました。

 決して僕への「どうしたらいいですか?」というメッセージではありません。2人の答えが出るまで話しあおう。そう話してくれたご家族と、話して話して話してほしい。間違いなんてないから。

 僕には何もできないし、アドバイスなんてできません。でも、あえて人に話すことではないけれど、話したいときに話せる、そんな場所が増えればいいなと思う。ただ、悔しい。病気が悔しいです。

成長した息子 僕は親として…

 今年もあと少し。この1年間で大きく成長した息子に、僕はどんな姿を見せられているのか。親として成長できたのか。子育て日記を通し、同じ子育て中の方、一段落された方から、多くのアドバイスもいただきました。みんなと会話できるこの場所に感謝です。ありがとうございます。

 この時期になると、飾っている妻の写真を1枚、1枚、キレイにするのが僕たちの「いつも」。息子とふたり、その時の会話は多くない。それぞれに、妻に、ママに、この1年を報告する。

 あるイベントの事前予約をしました。受付で担当の方が、「当日は、お母さんと来ますか?」。何の悪気もない言葉です。息子は、いつもより少し小さな声で「お父さんか、おばあちゃんと来ます」。その言葉を聞いて、担当の方がハッとしていました。何も悪くない。僕は、小さな声でも、しっかりとそう答えた息子を誇らしく思う。

 僕たちにはママはいない。小学2年生、今、息子は多くを理解しようとしています。(フリーアナウンサー)

コメント

  • 主人も幼少期に母を亡くして父子家庭で育ちました。小学校で母の日関連のイベントが苦痛だったそうです。 ウチの子は特別養子縁組で家族になってくれました。 お父さんがふたり、お母さんがふたり、どちらもい
    あひる 女性 40代 
  • シミケンさんが居合わせた息子ちゃんの受け答え。でも息子さんはこれまでもママがいない事を受け止めなければいけない体験をいっぱいしているでしょう。体の成長と共に心もいっぱい成長している事でしょう。
    ゆっこ 女性 60代