児相は子どもの気持ちに寄り添わなかった 児童養護施設の虐待訴える生徒に”説得”だけ

石原真樹、岡本太 (2019年7月9日付 東京新聞朝刊)
 東京都中野区の児童養護施設で心理的虐待を受けていると、都児童相談所の児童福祉司に訴えた女子生徒は当時、知人の勧めでやりとりを録音していた。「(生徒)自身に問題があったかもしれない」と言う福祉司に、「こんなに悩んでるのに、それはあなたのせいって言うのはひどいと思う」と泣きながら窮状を訴える生徒。福祉司は「涙が止まったら、今日はこれくらいにしようかね」と対応する姿勢をみせなかった。 

「だったら施設変えれば?」は心理的虐待

 47分余の音声では、生徒が「嫌なことがあるなら(施設職員に)直接言えばいいって言うけど、そんなことできる環境じゃない」と訴える場面がある。訴えても複数の職員に責められ、「『だったら施設変えれば?』って言われて終わる」と話している。

 東京弁護士会は今年2月の勧告で、他に行く場所のない子へのこうした対応や発言は心理的虐待だと判断。そもそも施設に子どもの居場所を変更する権限はなく、児相にある。

職員に言えないから福祉司に相談したのに…

 だが、福祉司は「納得してないんだったら、やっぱり話し合わないとだめだ」と促す。「(学校は)ちゃんと出たいでしょ?」と話を振り、施設を変更すると登校できないという話もしている。「泣きながら訴えたけど、何もできないと言われた」。生徒は福祉司に訴えた日、悔しい思いを無料通話アプリ「LINE(ライン)」で知人に伝えた。

 生徒は小学生のころ、施設の行事に参加したくないと別の福祉司に相談したことがあった。後で施設職員に「何で福祉司にそんなことを言うの」と怒られた。「職員に言えないから福祉司に相談したのに。言っても意味がないと思った」

 その後、話を聞いてくれないと感じた職員に反抗したこともあってか、施設内で孤立。入所している小学生とも遊ばせてくれず、一人で昼食をとることもあったという。つらくて「一人で泣いたことがたくさんあった」と振り返る。

あきらめ「施設はやっぱり変わらないんだ」

 2015年、「やっぱりちゃんと言おう」と意を決したが、「児相は調査の権限はない」との返答。「ここにいるしかないんだ」と思うと涙が止まらなかった。福祉司の助言で児童心理司の定期面談を受けると、学校など施設外でのリフレッシュを勧められた。「施設はやっぱり変わらないんだ」と思った。

 音声を聞いた都児相の元児童心理司で心理カウンセラーの山脇由貴子さんは「福祉司は子どもの気持ちに寄り添い、何ができるかの提案が役目なのに、施設にいるしかないと説得している。これでは子どもは『児相は救ってくれない』と諦めてしまう」と指摘。

 日本子ども虐待防止学会理事長の奥山真紀子さんは「福祉司は、具体的に何があって子どもが何を嫌だったのか、事実関係を丁寧に聞いて対応を考えるべきだ。過去に虐待通告があった施設なら、なおさら注意して聞く必要がある」と話す。