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中野の児童養護施設の虐待、女子生徒の訴えに児相は対応せず 指針に違反の可能性も

石原真樹、岡本太、森川清志 (2019年7月9日付 東京新聞朝刊)
 東京都中野区の児童養護施設「愛児の家」に入所していた10代の女子生徒が2015年、都児童相談所の男性児童福祉司に「施設で心理的虐待を受けている」と訴えたのに対し、福祉司は「児相は調査の権限はない」などと対応しない姿勢を示していたことが分かった。都のガイドラインは、虐待の訴えがあれば児相は都本庁に知らせ、本庁が調査する規定になっているが、生徒や施設は調査を受けていないという。  

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「感じ悪い」「ずうずうしい」…孤立

 生徒は知人の勧めで福祉司とのやりとりを録音していた。既に施設を退所している。録音や生徒によると、小学生のころから愛児の家の石綿徳太郎施設長らに「感じ悪い」「ずうずうしい」などと言われてきた。職員がほかの入所者に「(この生徒と)関わらないで」と言うのを聞いたこともあり、15年当時は施設内で孤立。髪の毛が抜けるほどつらかったと話す。

 このため、施設を訪れた福祉司に「(職員が)孤立化させてくる」「気分で八つ当たりする」「虐待を受けている」などと訴え、調査を求めた。

福祉司「児相に調査権限はない」

 福祉司は児相に調査権限はないとした上で、「(生徒)自身にも問題があるかもしれない」として、児相の児童心理司に話を聞いてもらうことが「気持ちを軽くする方法の一つ」と提案。生徒は心理司にも同じ趣旨を話したが、ほかに居場所をつくるよう勧める助言が中心だったという。

 東京都の虐待対応ガイドラインでは、施設でほかの子に接触させないなど、長期間の孤立は心理的虐待と例示。だが、生徒や施設によると、聞き取りなどの調査を受けていないという。

施設側は反論「孤立させていない」

 愛児の家を巡っては、都は13年、虐待通告を受けて調査したが虐待はなかったと認定。14年も通告があったが同じような内容だとして受理しなかった。15年に人権救済の申し立てを受けた東京弁護士会は独自調査で、複数の虐待があったとして施設に是正を勧告し、都の調査手法も「著しく不適切」とした。

 石綿施設長は「感じ悪いと面と向かって言ったり、孤立化させたりしていない。勧告については第三者委員会を立ち上げて調査している」と話す。都の桑田朋子担当課長は「個別のケースは答えられない。調査したかどうかも言えない」と説明した。

〈解説〉子どもの声に向き合えているか、再点検を

 児童福祉司は、児相で虐待対応にあたる中核的な職員だ。その立場にあって、被害を訴える子どもの声に向き合わないとどうなるか。やりとりの音声を聞いた大分大の栄留(えいどめ)里美助教(社会福祉)は「これでは子どもは相談を諦めてしまうし、被害が深刻化するのも防げない」と話す。

 千葉県野田市や札幌市などの虐待死事件では、子どものSOSを児相職員が適切に受け止めなかった。都や児相は、東京弁護士会や本紙の取材といった外部からの指摘があるまで、子どもたちの訴えを見過ごしてきたのではないか、との疑念は残る。

 福祉司は職員数が少なく、緊急的な虐待対応に追われているという事情がある。だからといって、施設にいる子の権利や安全を軽視していい理由にはならない。今回を特殊な事例ととらえず、取り組みを再点検する必要がある。(石原真樹)

児童福祉司とは

 都道府県などが設置する児童相談所で子どもの虐待などに対応する中核的な職員。国家資格ではない。東京都には今年4月時点で315人いるが、国の配置基準より185人も足りない。児童心理司は児相でカウンセリングなどを担当。都では141人いるが、配置基準を109人下回っている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年7月9日