濃いめ?薄め? カルピス作りで発達障害の子の成長支援 実践女子大でプログラム開発
松村裕子 (2019年11月25日付 東京新聞朝刊)
実践女子大(東京都日野市)の長崎勤教授(発達支援学)のゼミが、希釈して飲む乳酸飲料「カルピス」を使い、発達障害がある子どものコミュニケーション能力を高める研究に取り組んでいる。飲むことから始めた男児が、相手の好みの味や濃度を聞いて自ら作れるようになるなど効果が確認されており、学校や医療施設などで使える発達支援プログラムを開発した。
ダウン症の小1がカフェ 客の好みを聞いて「はいどうぞ」
ゼミは今月開催された実践女子大の学園祭で、ダウン症の小学1年の男児(7つ)がカルピスを振る舞う「なかよしカフェ」を出店した。男児は友達の子どもらと一緒に店員となった。客が来ると白いカルピスとブドウ味のどちらがいいかを確認し、コップに原液を入れ、水をそそいで棒で混ぜ「はいどうぞ」と差し出した。学生の付き添いを受けて約1時間、作業を続けた。
4年前、当時2歳だったこの男児の協力を得て研究を始めた。男児は月2回、大学でゼミ生と音楽や劇、ゲームを楽しみながら、おやつの時間にカルピスを使った研究に参加してきた。母親(44)は「以前は友達と遊ぶこともできなかったけど、今では知らない人にも対応できるようになった」と成長ぶりを語る。
7段階の発達支援 飲む→人に作る→相手の好みを把握する
開発したのは、年齢に応じた7段階の発達支援プログラム。
▽作ってもらったカルピスを飲む
▽相手に作ってあげる
▽相手の好みの味や濃度を聞いて作ってあげる
-と段階を踏んで指導。言葉で聞けない場合はメニュー表を使うなど、コミュニケーション方法も工夫した。研究はメーカーのアサヒ飲料(墨田区)と共同で行い、製品の提供も受けている。
カルピスは身近な飲み物で、発達支援に使うには最適という長崎教授。「発達障害の子どもにプログラムを活用してほしい」と呼び掛ける。本年度のゼミ生は3、4年生11人で、3年村上有咲(ありさ)さん(21)は研究の成果を踏まえ「卒業後は発達障害のある子どもを支援する仕事をしたい」と話す。