子を持つがん患者の会がスタッフ募集 代表の西口さん「最後の仕事。自分がいなくなっても続くように」

神谷円香 (2020年2月22日付 東京新聞夕刊)
 子どもを持つがん患者の会「キャンサーペアレンツ」が29日に、スキルのある人材に運営を支えてもらおうと初めてのボランティアスタッフ募集説明会を東京都内で開く。団体を立ち上げ、運営を担う代表の西口洋平さん(40)=東京都足立区=はがん告知から5年がたつ。迫りつつある人生の終幕の時を見据え、「自分がいなくなっても続いていくように」と組織の体制を整え始めている。

昨年1月、絵本出版を記念したパーティーに集まった会員たち。この後亡くなった人もいる。左端が西口さん=同港区で

5年前に「ステージ4」 悩み共有する会員は3500人超

 2015年2月、西口さんはがんの状態で最も重いステージ4の胆管がんと診断された。当時は小学校入学を控えた一人娘もいる中で、生活のこと、仕事のことを相談できる場がなかった。2016年4月に、子を持つがん患者同士の仲間を募り、情報交換する場を設けようと、キャンサーペアレンツをインターネット上のコミュニティーとして設立した。同年9月に一般社団法人となり、共同調査の協力や資金提供などで協賛企業も増えた。登録会員は3500人超。がんになった親と子どもの物語を描いた絵本の出版など、活動の幅は少しずつ広がっている。

 会員は原則非公開のネット上で自身の治療や生活をつづり、悩みを共有し合う。運営を担うのは西口さんを含めて5人で、患者以外もいる。サイトの管理や企業への営業などをしているが、西口さんがすべてに関わり、中心になっていた。

「一人で担うのは限界」患者から若者への発信も模索

 「代表の思いで立ち上げたが、いなくなればなくなってしまう活動もある。一人で担うには限界がある。こういう団体が必要な人は常にいる」。この先も必要な誰かに届くように。さらには、患者からの主体的なアプローチも今後は重要と考えている。

「キャンサーペアレンツ」の代表を務める西口洋平さん=東京都中央区で

 一時的なキャンペーンで寄付を呼び掛けたり、グッズ販売をしたりしても、それはその時のインパクトで終わってしまう。「若い世代のがんへの理解を得るのにどういうやり方がいいのか。一緒に考え、患者にもプラスになる発信を」。患者に限らず、限りある命を、今をどう楽しんで活動できるかも大切なことだ。

 募集するボランティアスタッフは、広報・PR、営業(事業開発)、経理総務。団体の方針を理解し、実務能力のある人材を求める。説明会は29日午後3~5時、東京都港区浜松町の株式会社ワークハピネスで。会場都合により定員50人。詳細は西口さんのブログ「35歳でのがん告知、最後の仕事。」参照。問い合わせはキャンサーペアレンツ事務局へのメールで。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年2月22日

〈2020年5月14日 追記〉「キャンサーペアレンツ」の発起人、西口洋平さんが2020年5月8日に亡くなりました。享年40歳。ステージ4の胆管がんと診断されてから、5年3カ月後のことでした。取材を続けてきた神谷記者が思いをつづりました。

亡くなる3日前まで「同じ境遇の誰かのために」 キャンサーペアレンツ発起人・西口洋平さんに学んだこと