「同性を好きに…親にも言えない」悩む女子高生へ、LGBT当事者の助言 まずは味方を増やそう 「ふんわりカミングアウト」も有効
4年前にゲイ公表 教員の鈴木茂義さん(42)
隠している間は「水中で息が吸えないような苦しさ」
「本当の気持ちを言えない時は、水中で息が吸えないような苦しさだった」
男性同性愛者(ゲイ)であることを公表し、東京都内の公立小学校で非常勤講師として働く鈴木茂義さん(42)は、相談者の苦悩に共感する。
自分が「周囲と違う」と気付いたのは小学生のころ。女の子よりも、「近所のお兄ちゃん」が気になった。だが、知られるのが怖くて、誰にも言えず、教員になってからも、周囲から「結婚は?」などと聞かれるたびにごまかし続けた。
「正直であれ」教育者の矛盾に悩み…4年前に公表
周囲に広くカミングアウトしたのは4年前。「子どもたちには『正直であれ』と言いながら、自分はゲイであることを隠している矛盾に悩んでいた」
プロの写真家がLGBTの当事者を撮影するプロジェクトに参加し、顔と名前を公表。当初は偏見を心配したが、同僚や保護者、子どもたちは「全然気にしない」「頑張って」などと背中を押してくれた。
ただ、好きな人や親へのカミングアウトについては「拒絶され、関係が全く変わってしまう可能性もある。そのショックは大きい」と指摘。まずは、電話などによる当事者向けの相談で気持ちを聞いてもらったり、当事者たちが集うイベントに参加したりして「サポートしてくれる味方を少しずつ増やし、その上で、カミングアウトするかどうかを含め、慎重に決めてほしい」とアドバイスする。
「帰ってくるな」怒鳴った父 弟のおかげで和解
鈴木さんが約10年前に両親に打ち明けた時、父親には「二度と家に帰ってくるな」と怒鳴られた。だが、事前に兄弟に相談していたため、弟が間に入り父をなだめてくれた。最後には父も「好きに生きたらいい」と言ってくれたという。
「親は子どもの将来を心配するからこそ、受け入れるハードルが高い。家の机の上にLGBT関連の資料を置いてみて反応を試すなど、少しずつ『ふんわりカミングアウト』をするのも一つの方法」と話す。
社会のLGBTへの理解を深めようと、現在は教育現場向けの講習会を全国で開催。「シゲせんせー」のアカウント名でツイッターでも情報発信している。
当事者サークル部長 レズビアンの「りぃな」さん(22)
「死にたい」と思った時期も…でも焦らないで
「私も同じような悩みを抱えていた。『焦らなくて大丈夫』と声をかけてあげたい」。そう話すのは、女性同性愛者(レズビアン)で、中高生を含むLGBT当事者や支援者らが集まって活動する名古屋市のサークル「名古屋あおぞら部」部長の「りぃな(活動名)」さん(22)だ。
小学6年生のころに「女の子が好きかも」と気付いた。だが、高校の保健体育で「思春期になると異性を好きになる」と教わり、「人と違う」と感じて「死にたい」とまで思った時期もあったという。
高2でパレード参加「自分だけじゃない」と安心
転機は高2の時。養護教諭に相談すると、LGBTの当事者が集うパレードが名古屋で開かれることを教えてくれ、足を運んだ。同世代を含む当事者と出会い、「自分だけじゃない」と安心し、楽になった。
中高生も気軽に参加できる場をと大学1年だった2016年に「名古屋あおぞら部」をつくった。誰でも参加でき、月1回、同市内に集まり、おしゃべりをする(新型コロナの影響で休止中)。愛知県外も含め毎回40人ほどが参加するといい、「他の当事者から恋愛話など経験談を聞くと参考になるし、生きるヒントが見つかる」と話す。