子どもなのに介護や家事に追われる「ヤングケアラー」の実情を知ろう 埼玉で出前授業
小学生のころから、難病の妹の面倒を
「私が頑張らなきゃと気負っていた」。19日、初回の授業が草加西高校であり、元ヤングケアラーの沖侑香里さん(31)=静岡県=が全校生徒約700人に向けて自らの半生を語った。
小学生のころから、5歳下で難病がある妹の面倒をみてきた沖さん。食事や入浴の介助、オムツ交換やたんの吸引…。主にケアを担っていた母の話し相手になることも役割だった。
友人には相談できず、「本当の気持ちを話せないモヤモヤがあった」。25歳の時に母が急逝すると、妹の介護のため離職。妹は2017年に亡くなった。
「ヤングケアラー」とくくられると…
沖さんは「今だから思うけど…」と断った上で、当時こんなサポートがほしかったと振り返る。「事情を分かっていてくれる大人がいて、同じ立場の人と関わる機会があれば良かった」
さらに、当事者たちは「ヤングケアラー」とくくられることは望んでいないともいう。「そっと見守ることも必要。特別視してほしくないけど、時には配慮もほしい」と理解を求めた。
ヤングケアラーを巡っては昨年11月、埼玉県内の高校2年生の4.1%が当事者や経験者だとする調査結果を県が公表。国が今年4月に発表した全国調査でも、中学2年生の5.7%、高校2年生の4.1%が家族の世話をしていると回答した。
「家族だけで頑張らない」ことが大事
一方、埼玉県の調査では当事者の19.1%が「ケアについて話せる人がおらず孤独を感じる」と答えた。問題が認識されにくいという背景を踏まえ、県教委は授業を企画。今後も中学・高校計6校とPTAを対象に予定している。
この日の授業で講演した日本ケアラー連盟理事で、立正大教授の森田久美子さんは「少子高齢化で家族の規模が小さくなり、誰でもケアを担う時代。家庭の中だけで頑張ろうとせず、周りが支えることが大事だ」と指摘。生徒には学校の先生やスクールカウンセラー、行政や自助グループなどに相談するよう呼び掛けた。