マルトリとは? 虐待ほどではない「子どもへの不適切な言動」が脳を傷つける ガイドブックで防止しよう

佐橋大 (2021年10月29日付 東京新聞朝刊)
 昨春以降、コロナ禍で人と人の密な関わりが控えられる中、心配なのが子育て家庭の孤立だ。専門家からは、子どもへの虐待、虐待とは言い切れないものの、心身への悪影響が指摘される不適切な関わり「マルトリ(maltreatment=マルトリートメントの略)」の増加を危惧する声が上がる。自治体の中には、子育て支援に関わる人向けにつくられた教材を使い、防止に力を入れるところも出てきた。

マルトリは、子育てに悩む養育者のSOS

 「マルトリ」は習慣的に暴力を振るうといった虐待よりも広い概念。声を荒らげて怒鳴る、子どもが見聞きできる場で夫婦で暴言を吐き合う、きょうだいや他の子と比べるなども含む。エスカレートすると深刻な虐待に結びつく懸念がある上、将来にわたって心や体の健康を損なう可能性を、福井大の友田明美教授らが研究で明らかにしている。

 一方で、友田さんは「マルトリは、ストレスや子育てへの悩みを抱える養育者のSOS」と言う。「社会全体で子育てを助ける『とも育て』を進めることが必要」と強調する。

 そうした知識を子育て支援に関わる自治体職員に広めようと、福井大は大阪府の豊中市、枚方市などとともに「マルトリに対応する支援者のためのガイドブック」(32ページ)を作成。昨年11月から、マルトリ予防ウェブサイト「防ごう!まるとり マルトリートメント」で無料公開している。サイトを管理する日本家族計画協会によると、これまでに自治体や医療機関、学校などから700件超のダウンロード申請があった。また、横浜市は市内18区の福祉保健センターなどに配り、相談に応じる際は留意するよう促している。

宿題しない、ゲームやめない…対応は?

 ガイドブックでは、マルトリが続くとストレスで脳が傷ついたり、感情のコントロールが苦手になったりすることなどを、変形した脳の磁気共鳴画像装置(MRI)画像を示して説明。その上で、子への接し方を具体的に助言するよう求めている。母親の妊娠期から、子が高校生以上になるまでの発達段階に応じた対応方法は、親自身が読んでも役立つ内容だ。

 例えば、1歳ごろの「かんしゃく・大声を上げる」などの悩みには「○○がしたいのね」と代弁し、気持ちが伝わっていると安心させる。新しい環境で過ごし始めた小学校低学年の「宿題をしない」という声には「やり方が分からない子もいる」として、最初は一緒に付き合う、「ゲームをやめない」中学年には、家族でルールを決めて居間などに張り、本人に宣言させる-という具合だ。

 自制心をつかさどる脳の前頭前野は、25歳ごろまでゆっくりと発達する。欲求や感情が先立つのは普通のこと。ガイドブックでは、こうしたことを分かっていれば、マルトリをしかねない親のイライラは和らぐと説く。友田さんの元には、児童福祉の若い担当者から「脳についてきちんと説明することで、早期に対処できている」という声が届いているという。

親もストレスで脳が活動低下し悪循環

 養育者へのアドバイスとして、ガイドブックでは他にも「子どもを叱るときは60秒以内で」「(怒鳴りそうになったら)決めておいた回避場所で10数えて深呼吸する」といったヒントを紹介。夫婦げんかを見聞きさせないよう、「メールなどを使ってやりとりを」とも提案している。

 友田さんは「親が育児ストレスを抱えると前頭前野の活動が低下し、子の気持ちが読み取りづらくなることも研究で分かっている」と指摘。それがさらなるストレスに結びつく悪循環を防ぐためにも、困ったときは助けを求め、周囲は知識を活用して手を差し伸べるよう呼び掛ける。

コメント

  • そのマルトリートメントを受けた結果が今の大人というか子どもたちの親なわけで、結果がどうだっていうのは自分たちが特になんにもなく育っているので悪い結果がどうのというのは、脅し的に聞こえなくもないと思う。
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  • 子育てに夢を持ちすぎないこと。 持って生まれた資質があります。どんなに頑張っても誰もがスポーツ選手にはなれないように、どんなに頑張っても乗り越えられない壁は何にでも有る。それは親も同じ。 その壁に
    うーりん 女性 40代