なぜぼくはキモいと言われるのか 自分を観察する「当事者研究」で悩みを解決した子どもたち 7人の事例を書籍化
雑誌「コトノネ」の特集で反響
本をまとめたのは「子ども・子育て当事者研究ネットワーク ゆるふわ」。全国の子育て中の大人や子どもたちが「ゆるくふわっと」集まり、経験を話し合うグループだ。メンバーの小中学生の研究が昨年、雑誌「季刊『コトノネ』」で特集され、反響があったため書籍化した。
「当事者研究」は自分自身を観察し、自助へとつなげる手法。精神障害者らが自らの症状に関心を寄せ、互いに経験を持ち寄り、回復につなげる作業として2000年ごろ、北海道の社会福祉法人「浦河べてるの家」理事長の向谷地生良(むかいやちいくよし)・北海道医療大名誉教授らが仲間と始めた。
撮影で浦河べてるの家を訪問したことをきっかけに、江連さんは2012年ごろから「子ども当事者研究」に取り組み始めた。2020年ごろに同じく当事者研究を実践する知人らとつながり、「ゆるふわ」ができた。
「闇くん」嫌な気持ちを擬人化
「おこるちゃんがいる」には子ども7人の研究が収録されている。「お父さんの圧」は、小学5年生が日々感じる父親の圧について考えた。周囲の大人と比べ、「お父さんの方がマシだった」とも感じたという。
学校などで「キモい」と言われるという中学生は、その状況や文脈を研究した。人をばかにする意味のほか、「本当にすごい!」という意味でも使われ、「いいキモい」と「悪いキモい」があると気付く。いじめられた時の自分の心の動きを整理し、「逃げる」ことの自分なりのとらえ方や、対処法をまとめた。
江連さんの中学3年の長女(14)の「身長と自分責めの研究」は、低身長に悩み、周囲の心ない言葉で傷ついたり、嫌な気持ちになったりしたことが出発点となった。その時の気持ちを「ぞわぞわさん」「いじめっ子さん」「闇くん」などと擬人化し、心に余裕が持てるようになるまでの成果を紹介する。
言葉にして楽に 自分を客観視
当事者研究を通じ、長女は「言えずにためていた気持ちが、言うことで楽になった。自分を客観的に見られたと思う」と振り返る。江連さんは「何となく子どもが嫌な思いをしていると感じていたが、だんだんと話してくれ、親子関係が変わった」と実感する。
子ども当事者研究の詳細は、ゆるふわのサイトに掲載。本は990円(税込み)。問い合わせはコトノネ生活=電話03(5794)0505=へ。