なぜぼくはキモいと言われるのか  自分を観察する「当事者研究」で悩みを解決した子どもたち 7人の事例を書籍化

(2022年5月17日付 東京新聞朝刊)

本の編集に携わった写真家の江連麻紀さん(右)と長女=江連さん提供

 「お母さんと遊び足りない!」「お父さんには、圧がある」「なぜぼくは、キモいと言われるのか」-。日々の悩みや困りごとの解決方法を子ども自身が見つける過程をまとめた本「子ども当事者研究 わたしの心の街には おこるちゃんがいる」(コトノネ生活)が出版された。編集に携わった写真家の江連(えづれ)麻紀さん(42)=川崎市=は「子どもが発見した『自分の助け方』は大人にも参考になるはず」と話す。

雑誌「コトノネ」の特集で反響 

 本をまとめたのは「子ども・子育て当事者研究ネットワーク ゆるふわ」。全国の子育て中の大人や子どもたちが「ゆるくふわっと」集まり、経験を話し合うグループだ。メンバーの小中学生の研究が昨年、雑誌「季刊『コトノネ』」で特集され、反響があったため書籍化した。

「子ども当事者研究 わたしの心の街には おこるちゃんがいる」の表紙=コトノネ生活提供

 「当事者研究」は自分自身を観察し、自助へとつなげる手法。精神障害者らが自らの症状に関心を寄せ、互いに経験を持ち寄り、回復につなげる作業として2000年ごろ、北海道の社会福祉法人「浦河べてるの家」理事長の向谷地生良(むかいやちいくよし)・北海道医療大名誉教授らが仲間と始めた。

 撮影で浦河べてるの家を訪問したことをきっかけに、江連さんは2012年ごろから「子ども当事者研究」に取り組み始めた。2020年ごろに同じく当事者研究を実践する知人らとつながり、「ゆるふわ」ができた。

「闇くん」嫌な気持ちを擬人化

 「おこるちゃんがいる」には子ども7人の研究が収録されている。「お父さんの圧」は、小学5年生が日々感じる父親の圧について考えた。周囲の大人と比べ、「お父さんの方がマシだった」とも感じたという。

 学校などで「キモい」と言われるという中学生は、その状況や文脈を研究した。人をばかにする意味のほか、「本当にすごい!」という意味でも使われ、「いいキモい」と「悪いキモい」があると気付く。いじめられた時の自分の心の動きを整理し、「逃げる」ことの自分なりのとらえ方や、対処法をまとめた。

「キモい」の研究を紹介したページ=コトノネ生活提供

 江連さんの中学3年の長女(14)の「身長と自分責めの研究」は、低身長に悩み、周囲の心ない言葉で傷ついたり、嫌な気持ちになったりしたことが出発点となった。その時の気持ちを「ぞわぞわさん」「いじめっ子さん」「闇くん」などと擬人化し、心に余裕が持てるようになるまでの成果を紹介する。

言葉にして楽に 自分を客観視

 当事者研究を通じ、長女は「言えずにためていた気持ちが、言うことで楽になった。自分を客観的に見られたと思う」と振り返る。江連さんは「何となく子どもが嫌な思いをしていると感じていたが、だんだんと話してくれ、親子関係が変わった」と実感する。

 子ども当事者研究の詳細は、ゆるふわのサイトに掲載。本は990円(税込み)。問い合わせはコトノネ生活=電話03(5794)0505=へ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年5月17日

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