元スピードスケート選手 高木菜那さん 妹・美帆はライバル、でも家族でスケートの話はしなかった

家族について話す平昌五輪スピードスケート金メダリストの高木菜那さん(市川和宏撮影)

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです
向き合わなければならない人だった
2月のミラノ・コルティナ五輪は、選手ではない立場で参加して、いろんな意味で楽しかったです。周りの人がどうやって選手を支えているのかを知ることができたし、応援する側として、オリンピックってこんなに熱くなるんだと思いました。妹の美帆を見てもっと嫌な心が出てくるかなと思ったけど、一つも出てきませんでした。
同じ競技者として、切っても切り離せない存在で、向き合わなければならない人でした。子どもの頃には、自分より活躍する姿を見るのがつらくて、心の中で「転べ」と思ったこともあります。その時々で美帆に対する思いは変化してきたけれど、いつも自分の軸の隣にいるような感じ。引退した今は距離感が変わって、ちゃんと切り離せているところはあります。
美帆とはライバルでしたが、家の中がギスギスしたことはありませんでした。父と母、兄がいるのですが、基本、家族でスケートの話はしないんです。どちらかの成績が良くなかった時は、私たちが気持ちを隠しているので家族もあえてそれに触れない。逆に良い成績を収めても、お祝いとかは特になし。兄と2人の時に「おめでとう」「よかったね」と言われることはあっても、ご飯の場ではいつも通りなんです。今考えると、その接し方がすごくありがたかったなって思います。
大好きで会いたくてたまらないみたいな愛情とは違うけれど、家族はみんな仲良しです。両親はスケート以外でも、私たちのやりたいことをやらせてくれました。共働きで忙しく、スポーツ選手を育てるために食事にすごく気を使って…ということはなかったですが、高木姉妹にとってはその環境が良かった。
美帆への思い 本を読んでくれて…
美帆とはアスリートとしてのお互いへのリスペクトはありますが、普通の仲の良い姉妹です。口に出すのはちょっと恥ずかしいので、引退発表後に改まって声をかけたりもしていません。ただ、世界選手権は笑顔で終われて本当に良かったです。五輪は苦しかったと思いますが、最後にあんなに楽しそうなレースができて、頑張ってきたご褒美だったのかなと思いました。
2月に競技生活や美帆への思いをつづった本を出しました。美帆も読んでくれて、「高木菜那を知りたい人には、姉ちゃんの日記みたいだから面白いと思う」と。「心や気持ちをさらけ出すのは難しいけれど、それを言葉にできるのも才能だし、ああいう経験をしてきたからこそ書けた本」とも言ってくれました。
現役生活に一区切りを付けたことで、私たちのまた新しい関係が始まることが楽しみです。引退してから、アスリートがセカンドキャリアを築く難しさを感じてきたので、美帆には「世の中は厳しい。人生そんな簡単じゃないぞ」と伝えたいですね。その上で、これから自分でつくっていく道を応援したいです。
高木菜那(たかぎ・なな)
1992年、北海道出身。兄の影響で7歳からスピードスケートを始める。2014年ロシア・ソチ大会で五輪初出場。2018年平昌五輪の団体パシュートと新採用のマススタートで金メダルに輝き、日本女子初の同一大会での2冠を達成した。2022年北京五輪では団体パシュートで銀メダル、同年4月に現役を引退。今年2月、初の著書「7回転んでも8回起きる」(徳間書店)を出した。
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