葛飾区の薬局が子ども食堂や食料品配布を続ける理由 「誰ひとり取りこぼさない」よろず相談所を目指して

(2023年11月9日付 東京新聞朝刊)

焼きそばと五目ご飯をパック詰めする今西さん(右)と石渡さん=葛飾区で

 調剤だけが薬剤師の仕事じゃない-。葛飾区を中心に調剤薬局をチェーン展開する「水戸薬局」は、子ども食堂や食料品を配布するフードパントリーの運営などの地域支援活動を通じて、「誰ひとり取りこぼさない地域のよろず相談所」を目指している。

コロナ禍の2020年にスタート

 7日午前、京成高砂駅前のマンション1階にある活動拠点で、夕方に開くフードパントリーの準備が進んでいた。水戸薬局の取締役店舗運営部長の今西利香さん(55)と社員の石渡麻里子さん(44)が、食料品と一緒に手渡す約120人分の焼きそばを作り、五目ご飯とともにパックに詰めていく。

 地域で学校薬剤師も務める今西さんは、朝ご飯を食べない子どもが気になっていた。社内で有志を募り、2020年12月、夕食を提供する子ども食堂を初めて開いた。コロナ禍で給食は「黙食」だった子どもたちに「楽しく食事してほしい」との思いもあった。活動の幅を広げ、現在は子ども食堂、フードパントリー、登校前の朝食提供などを手がけている。

薬剤師ならではの気づきがある

 活動は葛飾区や子ども食堂を支援するNPOからの助成のほか、企業や個人の寄付で成り立っている。薬局に張り出した活動報告を見て運営の手伝いを申し出る患者や近隣住民もいる。

 今西さんは、12日に文京区内で開かれる「みんなで選ぶ薬局アワード」(一般社団法人薬局支援協会主催)で水戸薬局の取り組みを発表する。「地域住民のことをよく知る薬剤師ならではの『気付き』が誰にでもあるはず。薬局を拠点とした見守りが広がれば」

 アワードは午後1時から、東京大本郷キャンパス福武ラーニングシアターで。全国の6薬局が地域での活動を発表する。一般参加もできる。参加費2000円。無料のオンライン配信あり。詳細、申し込みは薬局支援協会のホームページから。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月9日