「自分はヤングケアラーだと思う」小中学生は2% 志木市が調査で実態把握、新年度からヘルパー派遣へ

中里宏、出田阿生 (2024年2月16日付 東京新聞朝刊)
 埼玉県志木市は、きょうだいや病気の家族を世話している「ヤングケアラー」の小中学生を洗い出し、家庭ヘルパーを派遣して負担を軽減する支援事業を始める。費用180万円を新年度予算案に計上した。市は「アンケートや聞き取り、組織横断のネットワークでヤングケアラーを把握し、それぞれのケースに合わせた支援を行う。全国的にも珍しいのではないか」としている。

「支援が必要」43人を把握

 志木市は昨年8月から今年2月にかけて、全小中学校12校で小学4年生以上を対象に外部講師を招いた「ヤングケアラー講座」を実施。ヤングケアラーに対する理解を深めてもらい、その場でタブレット端末を使ったアンケートを行った。

 この結果、「(自分は)ヤングケアラーだと思う」と答えた児童・生徒は対象者3889人の2%に当たる79人いた。これ以外にも可能性のある児童・生徒を対象に聞き取り調査を行い、負担が大きく、支援が必要なヤングケアラーを43人(小学生24人、中学生19人)に絞り込んだ。

家庭ヘルパーは2時間×週2回

 家庭ヘルパーは、必要に応じ食事作りや買い物などの支援を行う。また、介護保険を使った福祉サービスなどへの橋渡しも行う。支援回数は週2回、1回2時間で、原則3カ月以内だが、最長6カ月まで延長できる。

 香川武文市長は「志木市は子育て支援、母子保健、教育部門の組織を横断した『児童相談システム』を持っており、1人も見逃さないように取り組んでいる。43人というのは、かなり実態に近い数字と考えている」と話している。

蕨市はヤングケアラー支援の条例案

 埼玉県蕨市は、「ヤングケアラー」を支援する条例案を、市議会3月定例会に提出する。

こども家庭センターが啓発

 9日記者会見した頼高英雄市長は「子どもに過度な負担がかかって学校に行けない、成長が阻害されるなどの問題が起きているが、子どもが自分から訴え出るのは難しい。関係機関が連携してヤングケアラーを公的支援につなげる目的で理念を定めた」と説明。昨年設置した市の「こども家庭センター」が中心となって啓発や支援に取り組む。

 ヤングケアラーに特化した支援条例は、県内では入間市で一昨年施行。上尾市も30代までの若者を含めた支援条例を制定している。

 また、新年度予算案には子育て支援策として「18歳までの通院医療費の無料化」「第2子以降の給食費無償化」「ひとり親世帯の子どもの大学や模試の受験料助成」を計上。家庭用防犯カメラの設置促進のため、個人宅は上限2万円として市が半額を補助する制度の創設を決め、関連する予算案を提出する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年2月16日