国が推進する「子連れ出勤」に賛否両論…なぜ拒否反応を招いたのか
少子化担当相の「母と一緒にいるのが大切」発言が物議
「乳児は母親と一緒にいるのが何より大切」「仕事も子育ても両立できる。新しい施設を整備する必要もない」
宮腰光寛少子化対策担当相は先月15日、子連れの母親が働くつくば市の授乳服メーカー「モーハウス」を視察し、子連れ出勤を絶賛した。
これに、ツイッターなどネット上を中心に「結局は、女性の負担」「(希望する保育所には入れない)待機児童の解消が先だ」「子連れでは仕事にならない」などと物議を醸した。
宮腰担当相はその後の記者会見で、子連れ支援施策として、子連れ出勤などに積極的に取り組む自治体向けの交付金拡充などを打ち出したが、質疑で「母親だけを対象としたり、政府や企業が強制するものではない」と釈明に追われた。
いま必要なものは「保育所の整備」と「夫の家事育児」
女性が子育てしながら働ける環境をつくるには、何が必要なのか。
ソニー生命保険が、2017年にネットで20代から60代の女性1000人を対象に調査し、「仕事で活躍するためにはどんな支援が必要か」を聞いたところ、8割以上が「保育や介護支援の公的サービスの充実」「夫の子育て・介護・家事の分担比率の上昇」の項目に「非常に必要」「やや必要」と答えた。
調査結果から、保育園の整備のほか、夫の子育てや家事の取り組みが足りていない現状が浮かび上がる。こうした問題が解決されないまま、子連れ出勤が持ち出されたため、拒否反応を招いたとみられる。
笠間市長「男はどうなんだ、という批判は承知している」
子連れ出勤導入に積極的で、事例発表会を先月に開いた笠間市の山口伸樹市長は「男はどうなんだ、という批判があるのは承知しているし、業種によっては、子連れ出勤は難しい」と認める。一方で「最初からバリケードを築いては何もできない。まずは問題提起し、徐々に理解が進めば」と訴える。
育児と仕事の両立を目指す団体「子連れスタイル推進協会」の代表理事で、モーハウス代表の光畑由佳さんは、多くの批判に「『都心でフルタイム』という働き方から、子連れ出勤は無理だという声が出るのだろう」とみる。
モーハウスの子連れ出勤について「男性もやっているし、女性だけをアピールしたいわけではない。子連れ出勤は保育園の代替ではなく、子育ての選択肢を広げるために提案している」と強調。「育児に優しくない社会の意識を変えるための試み」と、子連れ出勤をきっかけに子育て環境の改善を願う。
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