育休「2歳まで延長」の影響…保育園「落選」狙いで申し込む親が出てきた

(2018年4月1日付 東京新聞朝刊)
写真は育休の延長を決めた女性。復帰後の過酷さも理由の一つという=埼玉県内で

育休の延長を決めた女性。復帰後の過酷さも理由の一つという=埼玉県内で

 待機児童問題で、「保育園落ちた」と嘆く声が上がる一方、「落ちたい」と願って入所を申し込む人が今春、目立った。子どもが保育所に入れなかった場合に延長できる育児休業の期間が昨年、拡大されたからだ。育休制度の矛盾を指摘する声もある。

「職場に育休延長を認めてもらうため」

 ゼロ歳の長男がいる埼玉県内のアパレル関係の会社員女性(34)は、わざわざ競争率の高い施設を選んで4月入所を申し込み、希望通り落選。現在も育休中だ。

 職場では、男性並みに働ける独身女性しか評価されない。仕事と育児を両立させる過酷さを思い、育休の延長を決めた。「職場環境が変わらない限り、同じような選択をする人は後を絶たないのでは」

 東京都葛飾区のIT会社員女性(36)は昨秋出産し、職場に育休延長を認めてもらうため「落選」を狙って申し込んだ。「1歳での申し込みは狭き門」と聞き、4月復帰を予定したが、出産後に「もう少し子どものそばにいたい」と思った。法律では子が1歳になるまで1回は理由を問わず延長できるが、「職場は人手不足。気持ちが変わったからとは言いづらかった」。

昨年に法改正 形式的な申し込みは首都圏8区市で「区別」 

 国は育児・介護休業法を改正。昨年10月から原則子が1歳までの育休を、保育所へ入れなかったなどの場合に延長できる期間が「1歳半まで」から「2歳まで」に拡大された。保育申し込みを分散し、待機児童を減らす効果も期待している。延長期間中も雇用保険から給与の50%が給付される。

 育休延長のために形式的に申し込む人が一定数いることに、自治体は戸惑う。本紙が東京23区と政令市など首都圏の35自治体に行ったアンケートで、育休延長が目的の申込者を選考前に区別しているか尋ねたところ、8区市が区別していた。

 8区市は江戸川、江東、墨田、台東、練馬、文京、港の各区、さいたま市。自治体によっては、受付時など選考前に育休延長の希望の有無を確認し、延長目的と分かれば「選考対象から外す」「保育の必要性を示す点数を下げる」などして入所が決まらないようにして、不承諾通知は発行するという。

本当に保育必要な子が入れない…

 世田谷区は、育休延長目的を区別していないが、年間で約190人はいると推定。保育認定・調整課の有馬秀人課長は「本当に必要な子どもが入れず、保活が長引く要因の一つになっている」と指摘。「理由を問わず育休が延長できるよう、制度を変えてほしい」

 昨年の制度改正では、男性の育休取得率が低いことを受け、期間の一部を父親に割り当てる「パパ・クオータ制」導入が検討されたが、労使が折り合わず、見送られた。女性のキャリア形成や家事育児分担に悪影響だとの懸念も根強い。

 父親支援に取り組むNPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事は「女性活躍には男性の育児参画、イクボス(両立を支援する上司)を増やすことが欠かせない。政府、企業は本気で取り組まないといけない」と強調した。

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