男性育休の「失敗談」に学ぼう 人事担当・上司・パートナーとの対話のポイント ”家庭の事情”は職場と共有する時代です

(2022年6月17日付 東京新聞朝刊)
 育児・介護休業法の改正で10月から産後パパ育休(男性版産休)が始まるなど、男性が育休を取りやすい環境が整いつつある。ただ、実際に育休を取った男性からは後悔や反省の声も出ている。取得前・復職前・復職後のタイミングで、上司や妻・パートナーと念入りにコミュニケーションを取ることが、より充実した育休の鍵となる。

男性が育休を取得する前にしておきたいこと

約200人の父親「パパ育コミュ」

 「復職前に共働きのやりくりの事情を上司に伝えなかったせいで、忙しい役になってしまった」「復職後の働き方について、妻と話し合っておくべきだった」

 育休を取った男性たちが画面越しに「失敗談」を語る。子育て中の父親ら約200人でつくるグループ「パパ育コミュ」が今春に開いたオンラインの会。7人が体験を伝え、これから育休を取得する男性らの質問に答えた。アドバイスの一部を場面ごとに紹介する。

人事担当 話してパタハラ防止

 まず職場とのやりとり。男性の部下の育休取得を経験している上司はまだ少なく、育休を取る男性に対する嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」が起きることもある。「事前に人事担当に制度を問い合わせておくと、上司への相談時にも力になる」

 取得を申請する際、詳しい理由を伝える法的な義務はない。ただ、なるべく包み隠さず伝えた方が円滑に事が運ぶ。中でも、期間と目的は明確に上司に伝えたい。「妻が里帰り出産できないので産後1カ月サポートしたい」「上の子の世話があるので最低3カ月は取りたい」など、現時点での計画を伝えると、上司も調整しやすい。

上司 必ず復職前に打ち合わせ

 復職前には、必ず働き方を上司と打ち合わせよう。家庭の事情や、どのように働きたいかを伝える。特に育休前より抑えた働き方をしたい場合は、育休中からその意思を伝えておくと、上司も心積もりができる。

 復職後、希望する働き方とのずれが生じることも。例えば、家庭の事情で仕事をセーブしたいのに、上司が「休んでリフレッシュしたことだし、またバリバリ働く気だろう」と早合点し、育休前と変わらない働き方を求められる場合だ。「対話を重ねて事情を知ってもらうことが大事」

パートナー 取得前に目標共有

 妻やパートナーとは、折に触れて互いの考えを伝え合うことが重要だ。取得前には、育休中の目標を決めよう。「一番大変な産後を2人でスタートする」「共働きなので、互いにワンオペ(1人で育児)ができるようになる」など。

 復職前は、互いがどういう働き方をしたいか、子どもとどう関わりたいかを踏まえた話し合いが欠かせない。共働きの場合、園の送迎を分担するため、働く時間をずらしたり、年間予定を照らし合わせて調整したりすることが必要。一方が専業主夫・主婦の場合や、労働時間など働き方に違いがある夫婦は、より長く家庭で過ごす側が1人で家事育児を抱え込まない工夫もいる。日常的な分担に加え、「週2日は午後6時までに帰宅する」などの線引きをしておきたい。

すれ違いの原因は「対話不足」

 起こりがちなのが、対話不足によるすれ違い。夫は「妻の負担減のために働き方をセーブしたい」と考えていても、妻は「仕事に重心を置いてほしい」と望んでいるケースもあれば、その逆も。「自分はこういう働き方をしようと思うけど、どう思う?」「あなたはどうしたい?」と言葉にして伝え合うことが肝要だ。

 男性の育休取得推進講座などを手掛けるNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)理事の塚越学さん(46)は「仕事でよりよい結果を出すために、今は家庭の事情を職場とも共有する時代」と指摘。「育休中に病児保育や第三者サービスなど子育ての態勢を手厚く整えて実際に試し、そのマネジメントを夫婦で担えるようになってほしい」と話す。

5

なるほど!

2

グッときた

0

もやもや...

10

もっと
知りたい

すくすくボイス

  • ただこ says:

    今年の3月に1人目を出産しました。実母が要介護状態で里帰り出産の選択肢がなかったため、夫が産後1か月育休を取って夫婦で育児をスタートさせました。夫の部署では初の長期育休で出産予定日の半年ほど前から、上司や同僚と相談しながら業務を調整していました。家でも家事の見える化と効率化、育児の勉強をしつつ手伝いに来る義母と打ち合わせを重ねて出産の準備を進めました。この記事にあるように職場内も家庭内もコミュニケーションをとって共有することが大切だと実感しました。

    夫が妊婦健診の付き添いも出産時の立ち会いも面会もできず、両親学級もオンライン開催で、妊娠や出産、沐浴やオムツ替えなど赤ちゃんのお世話などを夫が習う機会がかなり少なく、私からも健診や母親学級で習ったことをベビーダイアリーなども使いながらその都度伝えるようにはしていましたが、共有に難しさを感じることがありました。

    夫が赤ちゃん人形での練習なしに我が子のお世話を産後すぐに行うことに不安を抱えており、地域の訪問助産師さんにお願いして自宅で用意したベビー用品を使って赤ちゃんのお世話の方法を個別で指導してもらいました。この個別指導で実際に自宅でどのようにお世話するのかシミュレーションでき、地域の訪問助産師さんとも繋がれて不安が軽減できました。産後、退院して間もない頃に赤ちゃんが便秘で小児科受診するか迷った時や乳腺炎になった時など自宅で助産師さんのケアが受けられて非常に助かりました。

    周囲では里帰り出産している方が多く、里帰りしない場合どのように準備していけばいいか夫婦で試行錯誤しました。新生児期は大変なところもありましたが、夫婦で一緒に育児をスタートさせたことで夫も赤ちゃんと積極的に関わり直接の授乳以外のお世話は一通りできるようになりましたし、家族としての絆が強くなり我が家は夫が育休取れてよかったと感じています。男性育休を進めていく流れの中で、父親が家事や育児について学べる場がもっと増えることを切に願います。

    ただこ 女性 40代

この記事の感想をお聞かせください

/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ