育休を取る男性への嫌がらせ「パタハラ」26%が経験 左遷や転勤を防ぐには?

長田真由美 (2021年9月11日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 改正育児・介護休業法が来年4月から段階的に施行されるのを受け、男性の育休取得が進むことが期待される。一方で懸念が大きいのは、育休を取る、または取った男性に対する上司や同僚による嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」の増加だ。育休を利用しようとした男性の4分の1がパタハラを経験したという調査結果もある。防ぐにはどうしたらいいのか。
グラフ パタハラを受けた経験、パタハラを受けてあきらめた制度

「育休が明けたら転勤を」→単身赴任

 「育休が明けたら転勤しませんか、と言われた」。岐阜県在住の女性(38)が、建設業の夫(37)から告げられたのは2017年末。第3子の出産まであと少し。夫は女性に続き、翌年秋から19年3月まで、初めて育休を取る予定だった。

 育休の取得は女性が提案した。共働きだが、第1、2子の出産の際は、自分だけキャリアが中断されたように感じ「早めに復帰して働きたい」と打ち明けた。

 夫は単身赴任を選び、育休後すぐ、家族で住む東京から電車で約7時間離れた西日本の地方都市へ。今年5月まで2年を過ごした。上司から「キャリアアップになる」と説明され、断れなかったという。女性は「育休後も子育ては続く。家庭の状況を聞いてほしかった」と話し「あれはパタハラだった」と振り返る。

42.7%が育休取得をあきらめていた

 パタハラとは、育児に参加しようとする男性への嫌がらせ。NPO法人全日本育児普及協会会長の佐藤士文(しもん)さん(44)によると「君にふさわしいポジションを与える、など一見ポジティブな場合でも本人の意向を無視していれば当てはまる」と話す。

 厚生労働省による昨年10月の調査によると、過去5年間、職場で育休制度などを使おうとした男性500人の26.2%が「パタハラ被害の経験がある」と回答。42.7%が育休取得をあきらめていた。相手は「上司」が66.4%を占め、複数回答で制度などの利用を申し出ることや利用を妨げる言動が53.4%で最も多い。

 パタハラが訴訟になる例もある。2019年6月、スポーツ用品大手メーカーの男性社員が、育休取得後に不当な配置転換などのハラスメントを受けたとして、会社側に慰謝料などを求めた訴訟は、今年3月に和解が成立。和解内容は非公表だが、会社側は育休を取りやすい職場環境の整備に努めると表明した。

背景に「絶対服従」 行動を起こそう

 佐藤さんによると、協会に寄せられる相談も多い。「育休を取ると言ったら左遷された」「別の支社に転勤させられた」「『出世しなくていいの?』と言われた」などさまざまだ。パタハラの背景には「『部下は上司に絶対服従』という価値観がある」。バブル期を含め、がむしゃらに働いてきた今の50代以上は、自分たちと同じ働き方を求めがちだ。ただ「今後は多様な働き方を選ぶ社員を支えないと、いい人材は確保できない」と訴える。

 育児・介護休業法の改正は、この世代の考え方を変える助けにはなる。しかし「法律だけでは不十分。何がパタハラかという知識を持ち、一人一人が行動を起こして」と佐藤さんは促す。「大事なのは泣き寝入りしないこと」だ。

 納得できない場合は、自身の評価や配置転換などの理由について具体的に説明を求める。被害に遭っている人がいれば手助けし、同僚らに支援の輪を広げる。そうした地道な動きが「社内、そして社会を動かすことにつながる」と強調する。

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