コロナ下の育休復帰、注意点は? テレワーク普及で子育て世代は働き方を変えるチャンス
「足を使ってなんぼ」が様変わり
一昨年11月から産休・育休を取り、4月に復帰する愛知県内の女性(40)。出産前に働いていた営業職の現場は、業務の半分以上がテレワークに移った。「これまでは『足を使ってなんぼ』という働き方。テレワークは経験がないので不安」と打ち明ける。
復帰を控えた2月下旬、ビデオ会議システム「Zoom」を使って上司と面談した。Zoomを使うのは初めて。テレワークでどう営業活動をするのか、顧客への企画の提案もオンラインか…。具体的な説明はなく「置いていかれた感じ」とこぼす。1年4カ月のブランクに加え、変化した働き方に「なじめるかな」と悩みは尽きない。
産休・育休社員のSNSで情報交換
不安をなくそうと気を配る企業もある。出社率を3割以下にした大手住宅メーカーの積水ハウス(大阪市)は、産休・育休中の社員が参加する会員制交流サイト(SNS)「キャリママサロン」で情報交換を促している。
積水ハウスは男性の育休取得率100%を誇り、仕事と育児の両立を掲げる。サイトは2014年に始まり、コロナ禍前から支えになってきた。大きいのが、既に復帰したさまざまな職種の社員が相談相手、メンターとして参加していること。コロナ下の働き方に関する質問が少なくない中、頼もしい存在だ。
メンターの中には、テレワーク導入を前向きにとらえる声もあるという。「不要になった通勤時間を就業時間に回すことで、時短でなく、フルタイムで働けるようになった」などが理由だ。
戻る場所の状況をしっかり把握
企業向けにセミナーなどを開く育休後コンサルタントの山口理栄さん(59)は「大勢の人が一度はテレワークを経験した今は、それだけ実態を分かっている人も多い」と指摘。「どのぐらいの頻度で在宅勤務をし、どう成果を出すかなどを具体的に説明できれば、柔軟な働き方が認められる可能性は高い」と話す。
復帰を前に働き手ができることは何か。山口さんは「戻る場所の状況を、具体的に把握しておくことが大事」と強調する。社有パソコンは持ち帰っていいか、家族も在宅勤務をしている場合に同じネットワークを使ってもいいかなど、働く姿を想像しながら少しでも疑問に思うことはつぶしておきたい。「遠慮せず、自分から上司や同僚に確認して」と呼び掛ける。
保育園から呼び出しがあったら?
復帰後は「これまで以上にコミュニケーションが重要になる」と話すのは、育休後シニアアドバイザーの竹本はるみさん(51)だ。例えば保育園などからの急な呼び出し。上司や同僚が周りにいる職場なら、状況を理解してもらいやすい。しかし、テレワークでは自分から連絡を取ることが不可欠。今から仕事を離れる、仕事は誰に引き継ぐ-といった情報を広く共有する仕組みづくりが必要だ。
一口に産休・育休からの復帰といっても、置かれた条件はそれぞれ違う。コロナ下であるかどうかに関係なく、上司がしっかり把握し、一人一人の能力や経験を最大限に生かせる環境が理想だ。多様な働き方が想定される中、山口さんは「どんな支援が必要か、上司はこれまで以上に意識してほしい」と話す。