デジタル化で先生の残業を削減 埼玉大付属小で実証実験 保護者への配布物はアプリで
近藤統義 (2021年6月29日付 東京新聞朝刊)
教師の長時間労働が常態化する中、埼玉大付属小学校(さいたま市)がIT企業の協力で働き方を見直している。「より良い教育に時間をかける」ため、保護者への連絡をデジタル化。プリントの印刷や回収など事務負担を減らしている。
1年間で残業を587時間も削減できた
埼玉大付属小学校は昨年4月から、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」(東京)のクラウドサービス「kintone(キントーン)」を実証実験の形で導入。さまざまな業務に合わせたアプリを自由に作れるのが特徴だ。
森田哲史副校長を中心に考案したのが、各家庭への連絡用アプリ。保護者はスマートフォンにアプリをダウンロードすれば、学校通信や給食便りなどを紙ではなくPDFデータで受け取れる。
全校児童は約630人に上り、配布物の印刷や回収、特に手作業での集計に多大な労力がかかっていた。「その時間があれば子どもと一緒に過ごしたり、授業の準備に充てたりできる」と森田さん。今年3月までの1年間で残業を計587時間、印刷費を約19万円削減できたという。
アンケートや欠席連絡もアプリでOK
このほか、学校評価アンケートの回答や児童の欠席連絡も保護者がアプリからできるようにした。学校日誌や会議録など校内の共有事項もアプリ上で管理。板書の写真を撮影して添付し、授業の改善について教員同士で相談できるページも設けた。
同校は多くの教育実習生を受け入れるが、教員の採用倍率は全国的に低下している。
森田さんは「私たちが生き生きと働く姿を後進に見せ、未来の教育界を担う人が増えてくれれば」と働き方改革の波及効果に期待する。