夏休みの学童保育 職員の「朝の開所準備」は業務と認められず 早めに出勤、善意任せが常態化

(2023年7月31日付 東京新聞朝刊)

 「朝の開所準備が業務として認められず、サービス残業状態になっている」。東京都江戸川区の学童保育(放課後児童クラブ)の非常勤職員(50代)からこんな訴えが本紙に届いた。授業のない夏休み期間中は、日中も施設を利用する児童が多い。現場の善意の下で「時間外労働」が横行しているのか。

換気や消毒、児童の休みチェックも

 情報を寄せた職員の出勤時間は午前8時と決められているが、「夏休み中は20分前には来る」。うだるような猛暑が続くこの時期、熱のこもった部屋に到着すると、窓を開けて換気し、空調をオン。汚れなどに気付けば清掃や消毒。鍵付きの書庫から出席簿を取り出し、保護者からの留守電を聞いて休みの児童を記入する。朝から汗だくだ。

 「8時になると一気に子どもが来て、対応に追われるので、準備作業は子どもが来る前にしておく必要がある」と強調する。

 この職員の契約上の勤務時間は週29・75時間。朝のサービス残業を週4日勤務で計算した場合、合わせて1.20時間ほど。勤務時間全体に占める割合はけっして小さくない。

大事な仕事 きちんと賃金支払うべき

 江戸川区は、朝のサービス残業をどう考えているのか。区教育推進課の担当者は「前日の閉所後に物品の配置や名札の準備などを済ませており、朝は仕事がないのが原則。若干早めに着くのは一般的」と説明する。

 30年以上学童保育の現場に携わってきた全国学童保育連絡協議会事務局次長の千葉智生さん(64)によると、開所前の準備に限らず、子どもの情報を職員間で共有したり、保護者の声に対応したりと負担は大きい。「これらは時間外労働の形で現場の善意に支えられている。大事な仕事なのだから、きちんと賃金を払うべきだ」と訴える。

 江戸川区の対応については「学童保育は、心身共に発達し、人との関わりの上でも大切な経験を重ねる時期の子どもたちの命を預かり、成長を支える場。それが軽んじられていないか」と疑問を呈す。

開所前に机を並べて拭く職員=21日、東京都練馬区の区立石神井児童館で(伊藤遼撮影)

都内11区で「サービス残業」状態

 夏休み期間中の一日学童保育の場合、東京都区部では、江戸川区のように開所時間前が「サービス残業」状態になっているのが大半だ。東京新聞が23区の学童保育担当課に問い合わせたところ、運営を民間に全面委託している6区を除く17区のうち、11区がサービス残業状態だった。一方、千代田区、港区、品川区、豊島区、北区、練馬区の6区は勤務時間に組み込んでいた。

千代田区、港区など6区は勤務時間

 練馬区の石神井児童館の1階にある「石神井児童館学童クラブ」では夏休み初日の21日、開所30分前の午前8時半に出勤した早出の職員が準備に追われていた。

 室内を冷やしながら麦茶を沸かす。朝の学習時間に備えて机を並べ、棚も含めて拭き清める。「前日の夜に掃除しても、一晩でほこりが落ちるんです」

 登録する児童34人の出欠管理は、出席簿と、壁かけのホワイトボードを見比べながら声に出して念入りに確認。合間に保護者から欠席連絡の電話も受ける。30分はあっという間に過ぎた。

 石神井児童館の池主力(ちぬしつとむ)館長(45)は「夏休みは子どもたちの生活サイクルががらっと変わる。1日を同じ集団で過ごすからこそ生まれるトラブルもあり、職員は気が抜けない」と開所前準備の大切さを説く。

学童保育

 共働きやひとり親家庭などの小学生を放課後や夏休みに学校内や児童館などで預かる制度。2023年5月1日時点の速報値で約144万5000人の児童が利用する。東京都江戸川区は区独自の事業として実施し、7月1日現在で6317人が登録する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年7月31日

コメント

  • 「一部の構成員のファインプレーで保っている組織は危うい」これは文科省の中央研修、危機管理講座の講師の言葉です。 学童保育の開所準備が職員の好意(無給)に委ねられている状況は、まさに職員のファイン
    にお 男性 50代 
  •  小学生は、思いもかけないようなトラブルが起きることがありますね。準備や引き継ぎは必須です。学校の場合は、残業代関係ないので、ここで言っても仕方ない(改善されるといいが)ですが、時間給で働く方や残業代
    たかお --- 60代