子育て中の地方議員 当選前9割、当選後8割超が「活動に困難」 支援者など「仲間であるはずの人」からのハラスメントも
今川綾音 (2024年4月16日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て中の地方議員を対象としたアンケートで、当選前は9割が、当選後も8割以上が活動に困難を感じていることが明らかになった。未就学児の子を抱えて選挙に当選した超党派の地方議員4人でつくる「子育て中の議員の活動を考える会」が15日、東京都内で記者会見し、調査結果を発表。公的な相談窓口の設置や、柔軟な働き方ができるよう会議や視察にオンラインの選択肢を設けるなどのガイドライン策定を訴えた。
1都3県の地方議員 男女95人が回答
調査は昨年11月~今年2月に実施。1都3県の地方議会に所属する59歳以下の現職議員のうち、昨年4月の統一地方選とそれ以前の選挙で、未就学児がいる環境での当選者を対象とし、男女95人から回答を得た。
未就学児がいることで困難を感じた問題として「早朝や土日、夜の街頭活動が難しい」と答えた人が、当選前(72人)、当選後(61人)とも最多。一番つらい経験として、「『育児が理由で街頭活動ができないなら、候補者になる資格がない』と言われたこと」「どこへ行っても『子どもはどうしてるの?』と聞かれること」との回答もあった。
「土日や早朝の活動の難しさ」理解して
考える会の薗部誠弥(そのべせいや)・世田谷区議は「特に支援者や政党関係者ら『仲間であるはずの人』の無理解やハラスメントに悩む声が多い」と説明。「土日や早朝などに長時間の拘束を伴うような活動は、子育てとの両立が難しいことを周囲に理解してほしい」という回答が多く、子育て中の議員の切実な願いだと述べた。
考える会のアドバイザーで、女性議員らを支援する「Stand by Women(スタンド・バイ・ウィメン)」代表の浜田真里さんは「子育てをしている議員が、子育て環境を良くしたいと立候補した結果、自らの子育てを犠牲にしなければならない状況が明らかになった」と指摘。「データで示すことで、議員の働き方改革を進め、議員の仕事を魅力的にしていかないとなり手は増えない」と訴えた。
同会は記者会見に先立ち、調査結果とガイドラインの制定などを求める要望書を岸田文雄首相と、総務大臣政務官の船橋利実議員に提出した。
アンケートの記述回答から
※内容を変えない範囲で一部修正しています
【政治活動と選挙活動中の一番つらい経験】
- 選挙への出馬が「育児放棄」だと言われた
- 夜の会合などで「子どもは誰がみているのか」と母親の役割分担を特定して偏見をもった発言をされ続けた
- 「子育てを理由にサボっている」という党関係者による陰口を、支援者から伝えられた
- 子育てと家事で時間が取られ、子がいることをリスクと感じ、家族にぶつけてしまった
- 選挙最終日、4歳の娘に「ママと一緒にいたい」と泣かれ、街頭演説に出ずに一緒に過ごした。他の候補者の街宣車の音が聞こえ、活動できない自分がつらくなった
- 予算委員会が長引き、預かり保育終了時間に間に合わず、保育士に叱責された
【議員になって一番つらい経験】
- 本会議中、子どもの熱が出たと電話がかかり、途中で退席して迎えに行った
- 議会1カ月前に子どもの体調不良が重なり、一般質問を諦めた
- 泊まりの視察の間の、子どもたちの世話のことが決まるまで
- 地域の活動に子連れで行った時、同じ地域選出の議員に「子どもを連れてまで無理して来なくていい」と言われた。パートナーに用事があり休日の地域行事に遅れて参加したら、自治会長に「朝一で来てあいさつしないとダメじゃないか、他の議員は来ていたぞ」と子育てのことを無理解に言われた