小学校、チーム担任制で負担軽減 休職・退職防いで「教員不足」に歯止め 杉並では4校導入、課題は情報共有
チーム担任制
学級担任を1人に固定せず、学級運営を複数の教員で分担するやり方などを指す。自治体や学校が現場の状況に合わせて導入しており「学年担任制」とも呼ばれる。文部科学省は働き方改革事例集で導入例を紹介しているが、国主導の施策ではなく、導入校数などの統計はない。
5学級を6人で 生まれた余裕
子どもたちが下校した午後3時半ごろ、7月上旬の杉並区立東田小のチーム担任用の職員室に、3・4年担当の5人の教諭が集まった。週1回の会議。「この科目が進んでないから、代わって」「夏休みの宿題の説明は私がまとめてやります」。黒板に張った各学級の時間割を見ながら、翌週の予定を確認し、児童の様子などを話し合った。
同校は昨年度、区内で初めてチーム担任制を導入した。きっかけは、担任教諭の病気休職が相次いだことだ。年度途中で担任3人が長期休職に追い込まれた年もあった。
昨年度は5・6年の5学級を6人で担当。都や区の教育委員会の追加配置で学級数より多くした。ホームルームや給食、清掃をみる担任は1週交代。国語や算数などは、各教科を得意とする教員が受け持った。フリーの教諭を常に1人置いて保護者への連絡や、他の教諭のサポートに入った。
加わった1人、川田紘平主幹教諭(39)は「担任を持たない週は、朝の授業前に教科準備ができるなど、余裕が生まれた。保護者対応や子どものトラブルにも素早く動ける」と振り返る。
富山、京都…他自治体でも導入
課題も見えてきた。児童や保護者アンケートで「ある先生にお願いしたことが、他の先生に伝わってない」「誰に話せばいいか分からなかった」などコミュニケーションの問題が指摘された。教諭側からも「子どもを覚えるのに時間がかかる」といった懸念が聞かれる。本年度は、そうした課題改善に力を入れつつ、川田さんら計5人で3・4年4学級を受け持つ。
こうした動きは各地で見られる。富山県南砺市は2020年度に市立小中学校全17校(当時)で導入。京都市では、22年度に市立小1校が始め、23年度は20校、本年度は27校に拡大した。市教育委員会の担当者は「子育て世代の時短勤務者が増えて、導入する学校もあるようだ」と話す。
杉並区教委によると、昨年度(今年2月末時点)で「担任不在」は区立小7校、8学級に上ったという。だが東田小は、担任不在も休職者もゼロだった。斎藤瑞穂校長は「昨年度、1人も休職者が出なかったことが成果」と話す。「担任不在になると、子どもたちは荒れ、代わりの教諭も疲弊してしまう。教育環境の面でもチーム担任制は効果的だ」と語った。
現状の制度見直し、余裕ある人員配置を
<教育研究家の妹尾昌俊さんの話> チーム担任制では、教員それぞれの力量や経験の差をフォローし合えるし、若手と中堅やベテランが協力しやすい。子どもから見れば、相性のいい先生に相談できるなどのメリットがあり、不登校対策にもなる。ただ、教員間で情報共有ができる時間的余裕がないことや、関係性の維持などが課題だ。関わる教員が増えることで、コミュニケーションや変化への対応を難しく感じる子もおり、丁寧な対応が求められる。国も学級担任制がベースの現状の制度を見直し、余裕のある人員配置ができるよう検討すべきだ。