〈アディショナルタイム〉マラソンの冬季五輪開催はあり?なし? 親子で話し合ってみよう

谷野哲郎
 2020年は東京五輪・パラリンピックの年です。ラグビーW杯と同じか、それ以上の盛り上がりが期待でき、今から楽しみにしている家庭も多いのではないでしょうか。東京五輪といえば、昨年10月、マラソン・競歩がIOCに押し切られる形で札幌開催になりました。そもそも、マラソンって夏季五輪で開催しなくてはならないのでしょうか。五輪を持続可能な形にするために、是非、お子さんとも話し合ってみませんか。

世界6大マラソン大会 夏季はなし

 マラソンの札幌移転案が判明した際、東京新聞運動部内でこんな話が出ました。「いっそのこと、マラソンを冬季五輪の競技にしてしまえばいいのに」。仕事の合間の雑談だったが、意外に妙案にも思えます。そこでマラソンの冬季五輪移行について、メリット、デメリットを真剣に考えてみました。


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 最初に感じたのは、陸上の長距離競技の冬季開催は全く違和感がないことです。毎年恒例の箱根駅伝は正月だし、東京マラソンも寒い時期の2月もしくは3月初旬。この気候なら熱中症で倒れる選手はまずいません。何より最大の焦点である暑熱問題は完全に解消されます。

2019年3月の東京マラソンで一斉にスタートする選手たち

 世界的に見ても、「アボット・ワールドマラソンメジャーズ」と呼ばれる世界6大マラソン大会は、ベルリンが9月下旬、シカゴが10月下旬、ニューヨークシテイマラソンが11月初旬、東京が3月初旬、ボストン、ロンドンが4月と夏季は一つもありません。冬季移行は荒唐無稽な話ではなさそうです。

デメリットも…低体温症や路面凍結

 しかし、陸上担当記者に聞くと、デメリットもあるといいます。一つは低体温症。寒さにより、体の深部温度が35度以下に低下した際に起きる運動・意識障害は最悪の場合、命を落とす危険性があります。19年の東京マラソンでも大迫傑選手がこの症状で途中棄権となりました。

2019年の東京マラソンでリタイヤ直前に日本橋交差点前を走る大迫傑=東京都中央区で

 もう一つは路面凍結。冬季開催都市は積雪が多い地域と重なることが多いです。同じ国内で雪が降らない地域を探せばよいのでしょうが、万が一、コースに積雪した場合は選手の転倒が相次ぎ、レースどころではなくなってしまいます。冬でも全く問題なしというわけにはいかないようです。

 それでも、私たちはこの問題について考え続けなければなりません。東京の次、24年の夏季五輪が開かれるパリでは今年7月25日、観測史上最高の42.6度を記録しました。地球規模での気候変動が進む今、夏に五輪を行うこと自体が限界に来ています。

パラリンピックのマラソンは大丈夫?

 また、気になるのは五輪のマラソンは札幌に移ったけれど、パラリンピックは変更しないことです。車いすラグビー日本代表主将の池透暢選手は「パラアスリートは脊髄損傷している選手もおり、うまく体温調節できない選手が多い」と話す。このまま東京でパラマラソンを開催し、選手の生命にかかわるような事故が起きたら、だれがどのように責任を取るのでしょうか。

 現行の夏季五輪は欧米の人気スポーツが手薄でテレビ放映権が高値で売れる7月から8月に設定されているが、このままでは早晩立ちゆかなくなります。サステナブル(持続可能)な大会を目指すのならば、例えば、10月や11月に変更することはできないでしょうか。もはや、開催時期を夏から変えるしか手はないのでは。五輪・パラは秋季と冬季で良いのでは。議論すべきは場所ではなく、時季ではないでしょうか。

 「アディショナルタイム」とは、サッカーの前後半で設けられる追加タイムのこと。スポーツ取材歴30年の筆者が「親子の会話のヒント」になるようなスポーツの話題、お薦めの書籍などをつづります。

 

コメント

  • 今更ですが、冬季五輪マラソンの話題を読んで、なるほどと思いました。これなら熱中症で倒れることもない。賛成です。
    sari 女性 --- 
  • こんな暑さじゃ走れないよ。真夏の日本でマラソンするのは無理。冬にやるのに賛成。