運動会を撮るコツ教えます! 知って得するスポーツ写真の極意〈アディショナルタイム〉

谷野哲郎
 そろそろ、春の運動会の季節ですね。「大切な思い出に」と、張り切ってわが子を写真に収める方は多いと思います。でも、知ってましたか? 運動会を撮るときにはいくつかのセオリーがあることを。今回のテーマは知って得するスポーツ写真のコツ。東京新聞写真部の笠原和則デスクに聞きました。

 玉入れや綱引き、徒競走にリレー。運動会は子どもたちを主役にカッコよく撮る技術が求められます。そんなとき、本職のカメラマンならどう撮るのでしょう? 写真部の笠原デスクは「運動会で撮影するときには、まず子どもの目の高さにレンズの高さを合わせましょう」と話します。

目の高さとレンズの高さを合わせよう

 笠原デスクは長野、シドニー、アテネと五輪を3大会取材。サッカーW杯も3大会経験したスポーツ取材の大ベテランです。彼いわく「相手の目の高さにレンズを合わせるのは、運動会に限らず、人物撮影の基本。大人が子どもを撮るとどうしても上からになってしまう。それでは良い表情は撮れません」。

 目は体の中でも写真の印象を決める重要なパーツなので、カメラマンは特に意識するのだとか。もちろん、ケース・バイ・ケースで「例えば、グラウンドでたくさんの子どもと一緒にいる場合は、脚立に乗って上から撮ると見つけやすいです。脚立がなければクーラーボックスなどの上に乗って撮ってもいいでしょう」。高さを意識すると、立ったり座ったりするようになるので、運動会は大人も動きやすい服装が良いそうです。

 次のポイントは「写真の中に主役と脇役を入れましょう」。カメラを構えたとき、自分の子どもだけ大きく写してしまう人が意外に多く、後で見ると、何をしているのか分からなくなるパターンがあります。「われわれは『背景に気を付けよう』とも言うのですが、跳び箱でも、玉転がしの玉でも、先生でもいい。主役(子ども)の他に脇役を入れると、途端に絵になります」と笠原デスク。どんな写真になるのか、自分でイメージするのが大事なのですね。

画面の中に「脇役」も入れよう!

 さて、ここからはテクニック編。例えば、リレーのときにはどのポジションで撮ればいいのでしょうか? ゴールの正面? 笠原デスクは「それでもいいのですが、リレーはコーナーの部分で撮るのが正解。走者の体が傾いて、いかにも走っているという疾走感が出ます。比較的近くで撮れますし、格好良く撮れますよ」。昔の写真を見直してみて、正面からばかりだという方にお薦めです。

トラック競技はカーブ区間で

 運動会以外のスポーツを撮るときにもコツがあります。例えば、野球の「振り切り」。少年野球の打者を写すとき、普通は顔が見えるように右打者なら一塁側から、左打者なら三塁側から撮りますが、思い切って、逆から撮ってみるのも妙手。「『振り切り』はバットを振り切ったときの姿を狙うもの。われわれもよくプロ野球の選手を撮るときに使います」

バッターは背中側から

 サッカーではゴールの瞬間は難しいので、とりあえず、子どもとボールをフレームに入れて写しておくのがベター。笠原デスクは「プロのカメラマンが狙って撮れないものがスポーツの世界に2つあります。何だか分かりますか? ボクシングのパンチが当たるシーンとサッカーのゴールシーンです。どちらも予測できない。逆に言ったら予測できるものなら、止められてしまいますからね」。プロの言葉に納得です。

CGメッセージ

 いかがでしたか。いまひとつ、イメージが湧かないという方、「実はお手本があります」と笠原デスク。「新聞の運動面にはいつも我々が考えて撮ったスポーツ写真が掲載されています。次の運動会はぜひ東京新聞の写真を見て、参考にしてはいかがでしょうか?」

 「アディショナルタイム」とは、サッカーの前後半で設けられる追加タイムのこと。スポーツ取材歴30年の筆者が「親子の会話のヒント」になるようなスポーツの話題、お薦めの書籍などをつづります。
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