「若いから次がある」に傷つく… 中絶や流産の悩みに寄り添う自助グループ 双子出産を断念したカウンセラーが設立
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中絶を選び「自分はダメな人間」
桑原さんは昨年12月、妊娠初期で胎児が一卵性双生児だと判明した。長男(5つ)は前夫との間に生まれ、再婚相手と迎える初めての妊娠だった。
翌月の検診で状況は一変した。胎盤が1つしかなく、出産は母子ともに危険が伴い、長期入院も必要だと告げられた。ちょうど激しいつわりが始まり、頭痛や吐き気に一日中悩まされるように。夫婦とも実家は市外で、長男の世話を頼める相手もいなかった。
現実的に出産は難しいと感じていたが、エコー検査の時に見た胎児の映像が頭を離れなかった。気持ちが揺れ動く日々を1カ月ほど過ごした後、出産を断念した。術後、自責の念が膨らみ、「自分はダメな人間だ」と感じるようになった。
同じ経験をした人と話ができれば
夫や母親、友人など相談できる相手はいたが、孤独感を感じることがしばしばあった。相手に気を使わせるのではないかと本音を言えなかったり、「若いから大丈夫。次があるよ」などと励ましの言葉に傷つくことも。「同じ経験をした人に共感してもらえていたら、『悩んでいるのは私だけじゃないんだ』と、もっと気持ちが楽になれたかもしれない」と語る。
児童心理を扱うチャイルドカウンセラーや、心理士の資格を持つ桑原さん。徐々に気持ちの整理がつくようになると、かつての自分と同じ境遇に置かれた母親らの心をケアする活動に興味を持ち始めた。
手術から半年が過ぎた8月。SNSにその思いを投稿すると、協力を申し出る声が相次いだ。その2カ月後、背中を押されるように「ハハコグサ」を発足した。
「忘れない」の思いを込めて
10月下旬、市内で初めて「お話し会」を開催。5人が参加した。女性たちが涙ながらに話す姿に、活動の重要性を再認識した。今後は1カ月に1回程度の頻度でお話し会を開く考えだ。
団体名のハハコグサは漢字で「母子草」と書き、花言葉は「忘れない」。桑原さんは2人の胎児が写った唯一のエコー写真を自宅の台所付近に飾り、毎日のように声を掛ける。「無理して忘れる必要はないと思っている。つらい経験を受け止め、笑顔を取り戻せる場所にしたい」