「子どもがいたら夢がかなわなくなる」就活中に乳児遺棄、容疑者の元大学生が供述  支援団体「選択肢はある。一人で悩まないで」

天田優里、奥村圭吾 (2020年11月5日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる

 東京都港区の区立公園で昨年11月、生後間もない女児の遺体が見つかり、神戸市の23歳の母親が死体遺棄の疑いで1日、逮捕されました。

 母親は「就職活動で頭がいっぱいで、子どもを産もうか、葛藤があった。おなかが大きくなったが見て見ぬふりをした」「子どもいたら夢がかなわなくなる」という趣旨の供述をしています。

 母親が昨秋に受診した神戸市の産婦人科の医師によると、母親は当時、妊娠27~28週目で、「生理が来ない」との受診理由でした。医師が中絶できる期間は過ぎていると告げ「今後は関係者と相談して進めてください」と話すと、取り乱すこともなく黙ってうなずいたといいます。同院への受診は、この一度きり。妊娠届を提出しておらず、母子健康手帳も未取得でした。

 思いがけない妊娠などについて相談を受ける支援団体は「公的支援や特別養子縁組の制度を利用する選択肢もある。一人で悩まないで」と呼び掛けています。

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【左】妊娠や特別養子縁組についての相談を受け付ける「ベアホープ」のサイト 【右】予期せぬ妊娠をした人の相談窓口をまとめている「全国妊娠SOSネットワーク」のサイト

出産時は大学4年 客室乗務員を志望

 東京・新橋の公園に生後まもない女児の遺体を埋めたとして、死体遺棄容疑で逮捕された母親(23)=神戸市西区、衣料品販売員=が警視庁の調べに「子どもがいたら夢がかなわなくなる」という趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で分かった。

 捜査関係者によると、事件当時、大学4年生だった母親は航空会社の客室乗務員を志望していた。卒業後は衣料品販売員として働いていたが、引き続き客室乗務員を目指していたという。

 警視庁は妊娠・出産が就職活動に不利に働くことを恐れて女児を殺害したとみて、殺人容疑でも調べる。

父親は分からず、相談相手もいなかった

 逮捕容疑では、昨年11月3日夜、東京都港区東新橋1の区立「イタリア公園」の植え込み近くに穴を掘り、女児の遺体を埋めたとされる。女児の死因は気道閉塞(へいそく)による窒息死だった。

 捜査関係者によると、母親は就職活動で上京するため利用した航空機内で産気づき、羽田空港の多目的トイレで約2100グラムの女児を出産。自分のはさみでへその緒を切り、遺体を捨てる公園をインターネットで検索していたという。母親は女児の父親を把握しておらず、相談できる相手もいなかったという。

思いがけない妊娠…相談窓口は全国にあります 「自分だけで育てられない」と感じたら相談を

 思いがけない妊娠などについての相談を受け付けている一般社団法人「ベアホープ」(東京都東久留米市)の赤尾さく美理事は「自分だけで育てられないと感じた場合でも、公的支援や特別養子縁組の制度を利用する選択肢もある。一人で悩まずに相談してほしい」と呼び掛ける。

 ベアホープでは、社会福祉士や助産師ら16人が相談に応じる。例年、年間の相談件数は約300件だが、今年は約2倍増のペースになっている。

 赤尾さんは「コロナ禍で失業するなどし、経済的に困窮して出産や育児に悩む女性が増えている可能性がある」と懸念する。

 養育困難との相談を受けた場合、赤尾さんは母親を公的支援につなげる。それでも難しい場合、実親が子どもとの法的な親子関係を解消し、別の夫婦に実子として育ててもらう特別養子縁組の利用も検討する。子どもがほしいとして、特別養子縁組を希望する夫婦は少なくない。

 ただ、妊娠や養育の相談を受け付ける行政の窓口や民間団体が全国にあるにもかかわらず、十分に知られておらず、情報不足で悩み続ける女性は多いという。

 赤尾さんは「相談窓口を周知し、保健師や医療関係者と協力して、迅速で的確な支援をしたい」と話す。

 相談窓口の一覧は、一般社団法人「全国妊娠SOSネットワーク」の「全国のにんしんSOS相談窓口」に掲載している。

特別養子縁組とは

 子どもが、家庭で愛情をもって育てられる環境をつくるために、公的に設けられた子どもの福祉のための制度。予期せぬ妊娠や、経済的な事情などにより、育てたくても育てられない親が、子どもの幸せを願い、育ての親に託すことで、安定した養育を受けさせることができる。

 実親との法的関係が残る普通養子縁組と異なり、戸籍上も養父母が実親扱いとなる。養親が裁判所に申し立てをしてから約6カ月の試験養育期間の後、縁組が確定すると、子どもの戸籍は実親から養親に移る。

 制度を利用しやすくするための民法改正で2020年4月から、対象年齢が6歳未満から原則15歳未満に引き上げられた(※)。また、成立までの手続きが「実親の養育状況と同意の有無を判断」する審判と、「養親と養子のマッチングを判断」する審判の2段階に分けられ、これまでは縁組成立まで可能だった実親の同意撤回を、同意から2週間経過後は撤回不可とすることで、養親(候補者)の負担が軽減された。

 ※本人の同意があり、15歳になる前から養親となる人と一緒に暮らしているなどの条件を満たせば、例外として15~17歳の縁組も認められる。


 特別養子縁組制度については、厚生労働省のサイトで詳しく説明しています。法律に定める許可を受けた民間の養子縁組あっせん事業者の一覧も紹介しています。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年11月4日

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