出生前診断に悩む妊婦の”心の居場所”になります「親子の未来を支える会」

(2022年4月29日付 東京新聞朝刊)

次第に呼吸器なしで過ごせるようになってきたひなたちゃん=三重県松阪市で

 超音波や血液、羊水などを通じて胎児に障害があるかを調べる出生前診断が広がる中、検査前後に不安を抱える妊婦をサポートする団体がある。千葉市のNPO法人「親子の未来を支える会」だ。障害の可能性を指摘されて動揺する妊婦に寄り添い、どんな選択をしても応援する立場を貫く。こうした取り組みは珍しく、理事の1人は「判断を迫られた時の心の居場所に」と話す。

「中絶なんてできない」心の中では葛藤

 三重県松阪市の女性(41)は長女のひなたちゃん(2つ)を妊娠していた2019年春ごろ、妊婦健診の超音波検査で染色体異常の可能性を指摘された。「胎児ドック」専門の産婦人科クリニックで、おなかに針をさして調べる絨毛(じゅうもう)検査などを受けた結果、ダウン症の陽性が確定。心臓疾患の可能性があることも判明した。

 約2年にわたる不妊治療の末、やっと授かったわが子。流産も2度経験している。中絶なんてできない。生まれてもちゃんと育つのかが心配になり、思わず「あきらめないと駄目ですか?」と医師に聞いた。返事は「あきらめる必要はないですよ」。続けて促された。「パワフルなお母さんがいるから連絡してみたら」

 紹介されたのが、ダウン症の長男(24)を育てながら「親子の未来を支える会」の理事を務める水戸川真由美さん(61)=東京=だ。わざわざ女性の地元まで会いに来てくれた。「産む」とは決めていたものの、心の中では葛藤していた。

オンライン相談「胎児ホットライン」も

 なんで「普通の子」に産んであげられないのか、この子は私たちのもとに生まれてきて幸せなのか。喫茶店で約3時間、秘めていた思いを泣きながら吐き出した。「うん、うん」とうなずいて話を聞いていた水戸川さんは言った。「あなただから、赤ちゃんは来てくれたんじゃないかな」。その言葉に「この子を守れるのは私だけ、と思った」と女性は振り返る。

 同年10月に誕生したひなたちゃんは、生まれてすぐに心臓の手術を受けた。最近は、1日の大半を呼吸器なしで過ごせるように。声を上げて笑い、抱くと胸に顔をくっつけてくる。娘をいとしいと思うたび「水戸川さんに背中を押してもらった。出生前診断を受けた人には、不安を理解し、支えてくれる人が必要」と思う。

 15年に設立された同会の運営には、水戸川さんのほか産婦人科医や看護師、助産師らさまざまな職種の人が携わる。ホームページ(HP)などで相談を受け付ける傍ら、昨年4月にはオンラインで話を聞く無料の「胎児ホットライン」を開設。HPから日付を予約すると、同会の研修を受けた人が相談に乗る。時間は1時間ほどだ。

出産か中絶か どんな決断でも中立貫く

 出生前診断を受けるかどうか迷っている人、染色体異常が分かり、産むか中絶するかで迷っている人…。「結果が出るまでの不安な気持ちを聞いてほしい」という声があれば、中絶した人が罪悪感を吐露することもある。これまでに約50人が面談を申し込んだ。

 同会の特徴は、出産の強要も、中絶の推奨もしない中立的な立場であること。どんな決断を下すにしろ、妊婦本人とパートナーが話し合い、考え、納得して答えを出すことが何より大事と考えるからだ。

 本人が望めば、障害のある子どもがいる家族や中絶を選んだ人を紹介することも。染色体異常の判明後、障害のある子を育てている家族に話を聞いた結果、産むことを選んだ人もいるという。「大きな判断を迫られる出生前診断は、妊婦の心の負担が大きい」と水戸川さん。「答えを出すまでの間、心の居場所になれるようにしたい」と話す。