新出生前診断 NIPTの連載に反響 思いがけない検査で苦しんだ妊婦、障害ある子を育てる親…当事者の思いは

(2022年4月15日付 東京新聞朝刊)
NIPTは今 新出生前診断を考える(反響編)
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家族とチンドン屋を結成し、太鼓を担当する村本大夢さん(中央)=岐阜県各務原市で

 ダウン症など胎児の染色体異常の可能性を、母親の血液から推定する新出生前診断(NIPT=Noninvasive prenatal genetic testing)。3月22~24日の3回にわたって、急速に広がるNIPTの現状について連載したところ、さまざまな反響があった。思いがけず検査を受けることになって苦しんだ妊婦、障害のある子どもがいるからこその幸せを訴える家族の声を紹介する。 

罪悪感と怖さ「生きた心地しなかった」 

 「NIPTは考えていなかったのに」。5月に第2子の出産を控える名古屋市の女性(39)は自身の経験を長文のメールにつづった。

 きっかけは昨秋の妊婦検診だ。超音波検査で、医師から「胎児の首の後ろのむくみ(NT=Nuchal Translucency)が少し気になる」と言われた。NTが厚いと、染色体異常の可能性が高いとされる。正確に測定してもらおうと「胎児ドック」を掲げるクリニックを受診したところ、ダウン症の可能性を指摘された。

 2つの医療機関での結果から、NIPTを受けたのは昨年11月、妊娠13週ごろ。「せっかく授かった赤ちゃんを諦めるなんてできない。結果が陽性でも産む」とは決めていた。

 ただ、夫は「陽性なら難しいのでは」という考え。おなかの子に「絶対に守るから」と胸を張って言えない罪悪感で毎晩泣いた。さらに、苦しみに拍車をかけたのは、中絶になれば、妊娠12週以降は役場に死産届を提出し、火葬をする必要があることだ。わが子の「死」に正面から向き合わないといけない。

 約2週間後に出た結果は陰性。「待っている間は生きた心地がしなかった」。そもそもNTは正常な胎児にも見られる上、胎児の向きや姿勢でも数値が変わる。分かってはいても障害の可能性を指摘されれば、どうしても気になる。「通常の検診を受けただけなのに、NIPTのように調べる手段が増えるほど巻き込まれてしまう」と女性。「あんなに恐ろしい思いは二度としたくない」と言い、「本人や家族をサポートする態勢が必要」と強調した。

「大変」「本人もかわいそう」は偏見

 「『障害のある子どもを育てるのは大変。本人もかわいそうだ』というのは偏見。当事者の気持ちを知ってほしい」。そう手紙を書いてきたのは、岐阜県各務原市の大谷弘さん(75)だ。自閉症の息子(45)を育てながら、知的障害のある人の家族らでつくる「各務原市手をつなぐ育成会」の理事長を務めている。

 大谷さんが紹介してくれたのは、各務原市内に住むダウン症の村本大夢(ひろむ)さん(32)一家だ。幼い時からリズム感が良かったという大夢さんは10年ほど前、父親の真司さん(72)、母親の雅代さん(67)とチンドン屋「ぷめぷめ村」を結成。大夢さんは太鼓を担当し、地域の行事やコンクールなどでパフォーマンスを披露してきた。

 「太鼓をたたくと目が輝く」と雅代さん。重度の知的障害があり、読み書き、話すことはできない。ただ言葉はなくとも、ひたむきに太鼓をたたく姿は、自然に大勢の目を引きつける。サックス担当の真司さんは「そこに『いる』だけで周囲に何かを感じさせる息子は、福の神」とほほえむ。

 2016年7月、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件。NIPTの広がりは、あの事件の犯人と同じように、命に優劣をつける人を増やすのではないかと危惧する。「楽しそうな息子を見てもらい、人には皆、存在する価値があると伝えたい」

NIPTとは

 Noninvasive prenatal genetic testingの略称。妊婦の血液に含まれる胎児由来のDNAを解析する検査。1~22の染色体のうち、日本産科婦人科学会が指針で検査の対象としているのは、染色体が通常より1本多い13番の13トリソミー、18番の18トリソミー、21番のダウン症の3つ。日本医学会が認定した検査の実施施設だけでも、年間約1万5000人に実施されている。

 急速に広がる新出生前診断(NIPT)。「命の選別」につながるという指摘もある検査と、どう向きあえばいいのか。3回にわたって考えた。

(1)手軽な検査で重い結果 急増する無認定施設

(2)3疾患以外の精度は不明、偽陽性も 難病の娘に思う「この子の母親になれてうれしい」

(3)新出生前診断を全ての妊婦に知らせる新指針への不安 差別や排除が助長されないか

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