<記者の視点>パパが育休を取るのは「すごい」のか 児童館で感じた戸惑い
2カ月の育休 甘い気持ちを恥じたい
「そんなことやってないで、ちょっとは手伝ってよ」「携帯なんかいじってないで、目を離さないで見ててよ」
妻の怒りの矛先は私に向いている。
9月上旬から2カ月、育児休業を取った。家族と触れ合う時間が増え、少しはのんびりできるかと考えていた当初の甘い気持ちを恥じたい。実際は慣れない子育てに大忙し。ハイハイができるようになった息子は、朝起きてから寝るまで目が離せない。それまでの平日、一人で子育てをしていた妻の大変さを身をもって感じた。
「パパ、今日は会社お休みですか?」
さて、日本では男性が育休を取りやすくなったのか。厚生労働省の雇用均等基本調査によると、直近の女性の育休取得率が85.1%なのに対し、男性は13.97%にとどまる。実に6分の1という低水準だ。
その背景や要因はさまざまだろうが、依然として「男性は仕事、女性は家庭」という考え方が社会に根付いていることもありそうだ。というのも、私自身、育休中に息子を連れて近所の児童館に行くと、周囲のお母さんたちから物珍しそうな視線を浴びることが多かった。
「パパ、今日は会社お休みですか」。そう尋ねられ、「今、育休中なんです」と答えると、一様に「すごい」という反応が返ってきて、戸惑うことも少なくなかった。確かに、周りを見ても週末でもない限り、日中に児童館にいるお父さんは1、2人だった。
前例がない? 同僚に迷惑がかかる?
政府は2025年までに男性の育休取得率を30%とする目標を掲げ、育児参加を促す。10月には子どもの誕生から8週以内に最長で計4週、2回に分けて休める「産後パパ育休」制度が始まった。中央省庁では昨年度の男性国家公務員の取得率が34.0%に達している。
徐々に変化の兆しは見えているが、職場で前例がなければ育休取得をためらう気持ちは理解できるし、同僚に迷惑をかけるのではと心配してしまうのも分かる。権利があっても、行使しづらい「空気」の存在を無視できないこともあるだろう。
「政権の最重要課題」とは言うが…
他方、今年の出生数は過去最少を更新し、初めて80万人を割り込む見通しだ。少子化に歯止めを掛けるべく、誰もが子どもを産み、育てやすい環境をつくることも待ったなしの課題と言える。岸田文雄首相は少子化対策を「政権の最重要課題の一つ」と位置付けるが、昨今の防衛力強化の議論に比べてスピード感に欠ける印象は否めず、危機感は伝わってこない。
私は2カ月ではあったが、育休を取って子育ての苦労を知り、育児への意識が変わるきっかけになった。少子化の今、国が掲げる男女共同参画やワークライフバランスの視点は特に重要だ。男性の育休取得を含めた社会の理解醸成と一人一人の意識改革は、この国の将来を見据える上で急務のはずだ。
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