反出生主義を知っていますか? ある35歳女性の告白「生まれなかった方が幸せ。子どもは持ちたくない」
全てに嫌気 心地いいのは「無の状態」
生まれなかった方が幸せだと考えるのはなぜか。女性は「働くことや家族との関わり、日常生活の全てに嫌気が差している。頑張ることにも、ただ生きることにも非常に疲れた」と話す。反対に心地いいと感じるのが「無の状態」。寝ている間の無意識が好ましく、起きている間は「考えることも意識がある今も嫌」という。
そうした感覚は幼い頃から。最初の記憶は定かではないが、小学校低学年で、両親に「私は自殺して死んだ方がいいですか?」と手紙を書いたことがある。子どもの頃からネガティブ思考で、考え過ぎてしまう気質があったと感じている。
両親から愛されていると思えなかった
会社員と専業主婦の父母、弟との4人家族。「両親から愛されていると思えたことがない」ことも自分の考え方に影響していると感じる。両親はお金の問題でもめる機会が多かったほか、週末は趣味のパチンコに出かけるため、渡される1000円で弟と昼ご飯を買って食べた。中高ではいじめに遭い、20代の頃からうつ病で投薬治療やカウンセリングを受けた時期もある。
うつが悪化した数年前、両親とそれまでの葛藤について話し合った。父親には「誰のおかげで生活できると思っている」、母親には「愛情を持って育てたのに泣けてくる」と言われた。「だとしたら私の受け取り方が悪かったと、自分を責める結論に至った」。同時に「自分の都合しか考えないのに、なぜ子どもをつくったのか」と両親を恨む気持ちもあったという。
「生まれれば苦痛も」ベネターに納得
心に秘めていた感覚に名前がついたのは2年ほど前。雑誌や本で反出生主義の考えに触れた。「生まれれば快楽も苦痛もある。生まれなければ快楽も苦痛もない。この2つを比べると、苦痛がある前者の方が害悪」。南アフリカの哲学者デイビッド・ベネターの主張が「思っていたことはまさにこれ」とふに落ちた。
趣味の読書や映画で感動することはあるが、女性には「喜びや幸せがなくて、かつ苦痛もない方がすごく魅力的」に感じる。自分が「無」でいたかったという思いが、「私の子どもは産んでいないから存在していない。なのでそこにいて、と思う。産まないのが私の愛情」という考えにつながるという。
恋人と子どもの話 変わりたい思いも
苦痛を感じながらの暮らし。仕事もあまり長く続かず、現在はパートで生活費を得ている。「一緒にいてくれる人がいるとありがたい」と感じるため、パートナーが欲しい気持ちはある。半年ほど前にできた恋人とは子どもや結婚の話が出ている。
いまは、自分の考えや思いをどう伝えるかが悩ましい。反出生主義を「受け入れてもらえなければ、本当にしょうがないと思うしかない。でも、この人との子どもが欲しいと思えれば幸せだとは思うし、変われないかという願望もある」と心は揺れている。
「生まれなかった方がいい」「子どもを産まない方がいい」。そんな考え方への意見や女性へのメッセージを下記の「すくすくボイス」欄からお寄せください。取材に応じてもいいという方は、メールアドレスなどの連絡先も記載してください(連絡先はサイト上に公開はされません)。反出生主義の専門家の話とあわせて、後日公開します。
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