これでいいのか育休退園 下の子が1歳になると上の子は退園させられる 水戸市の父親が訴え「もっと長く取得したいのに…」
取得できるのは3年 実際は11カ月だけ
男性は妻、長男(3つ)、次男(生後6カ月)の4人暮らし。夫婦ともに会社員で、いずれも今年12月まで育児休業中。長男は市内の保育所に通っている。「本当ならばもう少し育休を取りたいんだけど…」とうつむく。
職場の制度上、男性は育休を3年取得できるが、実際に取得を予定しているのは約11カ月。水戸市の決まりでは、育休を取得した場合、下の子が1歳になる前日までしか上の子を保育所に預けられないためだ。それよりも長期の育休を取得すると、上の子は退園を余儀なくされる。
2人の子育ては「想像以上に余裕がない」
男性は「2人の子どもを育てる生活は、想像以上に余裕がない」とこぼす。授乳や睡眠など2人の生活リズムがそれぞれ違い、「夫婦がゆっくり体を休める時間がない」からだ。一時は、子育て施策が充実した市町村への転居も考えたが、水戸市内には教育に熱心な保育園があり思いとどまった。
男性は「お金を払ってでも、保育園での席を確保したいぐらい。子どもが生まれてなければ分からなかった問題だ」と訴えた。
水戸市の育休退園 「0~2歳児」に適用
水戸市の育休退園は、出産時に利用中の児童(上の子)が0~2歳児のクラスに在籍している場合に適用される。冒頭の男性の長男も、次男が生まれた時点で2歳児クラスに在籍していた。「3歳児からは小学校入学までの架け橋の時期。園での生活を経験した方がいい」(松本崇・幼児保育課長)との判断から対象にならない。
ルールの背景には、保育園の入園希望に十分応じられていない状況がある。
背景には「希望する園に入れない」現状
水戸市の近年の出生数は年間1800人前後。保育園や認定こども園など、保育に関わる施設は市内に約110カ所で、国の基準に即した「待機児童」は1人だけ。しかし、実際は希望する保育園を利用できないなどの理由で約130人が入園に至っていない。なお、育休退園となる児童は、年間で10人未満という。
松本課長は「育休が明けて保育園を利用したいという人もいる。今後、保育園の利用の方法が変わる可能性もあるが、現状はすべての希望に対応するのは難しい」と述べた。
水戸市は7月7日、こども家庭庁が提唱する「こどもまんなか応援サポーター」になると宣言した。高橋靖市長は、子育て世代や子どもに優しいまちづくりを目指す方針。まだ課題は多いようだ。
育休退園は子どもの立場に立っていない 改善した自治体も
◇保育の問題に詳しい中村強士・日本福祉大准教授(社会福祉学)の話
育休退園は、そもそも子どもの立場に立っていない考え方だ。上の子が楽しく保育園生活を送っているのに退園せざるを得ないのは、成長に大きな影響を与える。岐阜県大垣市のように、市長選で立候補者が育休退園を取りやめると公約を掲げ、改善を図った自治体もある。
【関連リンク】大垣市公式サイト「育児休業に伴う退園の取り扱いが変わりました」(2021年6月1日)
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