〈中倉彰子さんの子育て日記〉11・盤上の異文化交流
先日、浜松市の「ムンド・デ・アレグリア学校」という南米系の外国人学校の子どもたちに将棋を教える機会がありました。日本の小学校では何度も講義をしていますが、外国人学校は初めて。期待と不安の中、教室のドアを開けると、「こんにちは!」と、元気よくあいさつをしてくれました。
おやつに「おいしそう~!」
講義では、棋士の和服の対局姿や、将棋の起源チャトランガというボードゲームの写真などを紹介しながら、日本将棋の歴史や文化の話をしました。皆興味津々で聞いてくれましたが、タイトル戦の対局中に出るおやつの写真を見せると「おいしそう~!」と、これが一番反応が良かった(笑)。
将棋の駒は漢字なので、駒の動きより先に、漢字から教えます。
『角』を見せると「ツノ!」「そうだね。でも将棋だと『カク』と言うよ」「カク? 『書く』だね」。生徒同士が通訳しながら教え合い、みんなで理解しようとしている様子が分かります。
言葉のコミュニケーションは完全でなくても、将棋を通してこんなに楽しく交流できるなんて。つい私も調子に乗って、「飛車はタテヨコの動き。ウルトラマンのシュワッチ!みたいだね」とジェスチャー付き(笑)。
「教員がずっと通訳に入ることも可能ですが、できる限り独力で、日本語で理解してほしいというのが望みです」。先生たちの子どもに対する優しさを感じました。
実戦では5×5の小さい盤を使い、子どもたちと私で「王様を捕まえる」ゲームから。上手に玉を捕まえられた子どもは「やった~!」と大喜び。表現が本当に豊かで、こちらまでうれしくなります。
子どもたちには、大人になったら南米と日本を結ぶ懸け橋としてぜひ活躍してほしい。
わが家の子どもたちも、大きくなったら世界の文化に触れてほしいな、と思いました。
子ども語録
マキ(4つ)の遠足の前の晩。「ママ、早くお弁当作らないと!」とマキ。私が「朝早く起きて作るから大丈夫よ」と答えると、マキは「マキ、遅く起きちゃうからダメだよ!」…。最近、寝ぼすけのマキちゃん。いつも早く起きましょうね。(プロ棋士)