子どもは親をよく見ている 息子に登山に誘われて〈清水健さんの子育て日記〉51

(2023年5月17日付 東京新聞朝刊)
写真

いろんな景色をこれからも!

清水健さんの子育て日記

思い出の山「きっと気持ちいいよ!」

 子どもはすごく敏感だ。

 「金剛山に登りたい!」。息子とは今までに3回、登った。もちろん達成感も、頂上でふたりで食べるカップラーメンも最高である。でも、正直、かなりしんどい。僕はもちろん、小学3年生の息子の体力的にも、登るにはそれなりの覚悟が必要だ。なぜ、いきなり登山なのか。

 「金剛山でも行こうか!」。妻とは何かあると気分転換に登った、僕たち夫婦の思い出の場所のひとつ。登山中、息子にもそんな話をしたこともあった。僕が最近、少しまいっていたのを息子は見ていたんだろう。「きっと、気持ちいいよ!」。本心はわからない。でも、子どもは親を見ている。びっくりするぐらい見られている。

 それにしても体力がついてきた。「先に行かないで! 見えるところまで!」と何回言ったか。一緒に登った僕の姉と姪っ子に、頂上で写真を撮ってもらった。「ほんと、骨格が一緒だね!」って大笑い。3人では登れなかったけど、確かに親子だなと写真を見返し妻に話しかける。

聞かないふりをして、聞いている

 すごい!って頭をクシャクシャにした。体育の授業で50メートル走の計測があった日、家に帰ると「クラスで2位だったんだよ!」って。「1位じゃないの?」とは言わない。

 あれは幼稚園の運動会前日。「明日は1位になろうな!」「パパは速かったんだぞ!」って何げなく息子に話した言葉。寝る直前、小声で「パパ、明日、1位でなくてもいい?」って、今にも泣きそうな表情で聞いてきた。何で息子に自慢話を。子どもたちは見ている、聞いている。そして期待に応えなければって。

 今回は「おっ、すごいじゃないか!」。この返答があっているかはわからない。息子も言い訳はしない。「上体がね、少し高くなったんだ! もう少し前傾姿勢で走れたらな」って。実は、数週間、ふたりで練習していた。僕は高校時代、陸上部で100メートル選手。ちょっとした反抗期でもあり、全部を素直には聞かない息子。でも、聞いていないふりをして聞いている。

 速くなくてもいい。でも、こうして息子がやりたいことに一緒に本気で取り組んで、反省を込めて話す時間、そして、妻の写真の前で話せることがうれしくてたまらない。

 止まってもいい。でも、歩けば、進めば、頂上につく。どんなにしんどくても。誘ってくれてありがとう。親子ふたり、頼り頼られ、今回も頂上で食べたラーメン、おいしかったね。

清水健(しみず・けん)

 フリーアナウンサー。8歳の長男誕生後に妻を亡くし、シングルファーザーに。

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すくすくボイス

  • Makimama says:

    同級生に若くして奥様を亡くされ、1人で娘さん2人を育てあげた人がいました。

    「すごいね、頑張ったね」と声をかけたら「誰だってやるさ、俺しかいないんだもん」と返ってきた言葉。

    「娘の三つ編みだってやったんだぜ」と笑顔で答えてくれた同級生の爽やかさ、しなやかな強さを記事を読ませていただき思い出しました。

    Makimama 女性 60代
  • いかまママ says:

    しみけんパパ、コロナ前講演拝聴しました。
    私も乳がんサバイバー。子供達は、成人していますが母親の役目まだまだあるかと。パパしか出来ない事もあると思います。
    答えは、この世から奥様の元へ旅立つ時にわかるはず👍
    力抜いて頑張りやー

    いかまママ 女性 60代
  • ちひろ says:

    自分を猛省しました。
    こどもはみてますね。
    声のかけ方、工夫したいと思います。

    ちひろ 女性 40代
  • めぐ says:

    清水さん、息子くんと山登りできてよかったですね。子育て頑張ってる清水さん大好きです❤️

    私は当時子供が13歳👧10歳👦の時に離婚し、子育てをしながら元夫の作った借金200万を返すあてもなくひたすら働きました。何の技術もなかったため仕事も見つからず経済的にも精神的にも行き詰まった過去を思い出しました。

    同時期に娘の友達のお父さんが亡くなった時に「お父さんが亡くなってかわいそう」、私にしてみれば同じ母子家庭なのに私の場合は冷たい視線しかなかった。くやしかったし、悲しかった。自然と涙が溢れました。

    普通に生活している人からすると何気ないひと言が私にはきつかったです。

    娘は多感な時期だったので荒れ荒れで学校から呼び出されることも多々あったり、少年野球で靭帯を切った息子の病院に連れて行くとなった時の会社の対応など信じられない言動の数々。本当に泣きました。仕事に疲れ泥のように眠り、夜中元夫に追いかけられる夢にうなされ1人で泣いていました。

    お酒を飲むわけでもなく、趣味を楽しむでもなく仕事と子育てだけを必死で頑張ってきた私の人生は何だったのかな?と時々思いますが、これでよかったのかな?と自問自答しながら過ごしています。

    最近は大きくなった子供たちから感謝の言葉を聞くようになり、間違ってなかったんだなーって思えるようになりました。
    子育ての時期はほんとうに大変ですが、離れてしまうと寂しさだけしかありません。

    どうぞ、今の現状に向き合って頑張ってください。

    めぐ 女性 50代
  • ぴょんた says:

    素晴らしい親子。素直に育っていますね。うちの双子は14歳の男の子。コロナ前までは子供でしたがコロナが明けたら大人の体格。180cm、80kg。175cm、65kg。今年が親子で最後の旅行だ。と、おもっている。北海道、沖縄、国内全部を5週間で回る。3人でどうなるか? 二人が喧嘩すると仲を割って仲裁しているけれど、もう大きすぎて届かなくなっている。喧嘩だけはしないでくれ。と、心の中で祈っている。

    ぴょんた 女性 60代
  • mama says:

    息子さん、8歳に成長されたのですね。
    時の流れに、お二人の姿に涙が出ました。
    シングルファザーとして一生懸命に頑張られているのですね。息子さんは、お父さまのように素晴らしい青年に成長されると思っています。応援しております。

    mama 女性 70代以上
  • 南初子 says:

    清水さん、お疲れ様です。息子さんと山登りされて本当に良かったですね😊

    息子さんも本当に成長されましたね☺️息子さんも清水さんの背中を見て育っていると思います。いつも奈緒さんが2人を見守っていると思います。そして感謝されていると思います。

    1歩ずつ登る1歩ずつ途中休憩し心が折れかけて汗でもまた1歩ずつ頂上に着く。前に進まないと頂上には着かない。でも休憩したとしてもたどり着く😊清水さん、これからも息子さんと頑張って頂上にたどり着いてくださいね。負けずに前を向いてくださいね。応援しています。

    南初子 女性 70代以上

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