〈坂本美雨さんの子育て日記〉52・もしあなたがいなくなったら
横断歩道で車が…思わず涙
先日、横断歩道で車がスピードを上げて曲がってきて、彼女がよく注意せずに渡ろうとし、ちょっと危ない場面があった。思わず大声で注意して事なきを得たが、ちょっとびっくりして泣いてしまった。一緒にいた仲良し親子と慰めながら「ほんとに気をつけてちゃんと右左見て。お願いだから死なないでよ。もし○○ちゃんが死んじゃったら、もうママの人生真っ暗だよ」と言って、ぎゅーぎゅー抱きしめた。
その数日後、そんなことはすっかり忘れて2人でスーパーへ向かっていると、ふと彼女が言った。「ママさ、○○ちゃん死んだら人生真っ暗って言ってたけど、サバちゃんがいるから大丈夫でしょう」と。サバちゃんとは、お姉ちゃんとして一緒に育っている、うちの猫のことだ。とても驚いた。たまに、こんなふうに、過去の発言や出来事が彼女の中で熟成されて戻ってくることがある。
なるほど、きっと考えていたんだな…。自分の存在が、母の人生に影響するということの意味を。そして、母には自分と同じくらい大事なサバちゃんがいるんだから大丈夫だろうという、常々抱えている姉への嫉妬も含んだ複雑な気持ち。
これは真剣に答えなくちゃ
これは真剣に答えなくちゃいけないと思い、止まってしばらく考え、「いや、真っ暗だよ」と答えた。「もしあなたがいなくなったら、本当に真っ暗で、生きていく力がなくなると思う。姉妹って、どちらかいれば大丈夫、ってわけじゃないんだよ。でも、サバちゃんがいるから、真っ暗でも生きていかなきゃいけないし、生きるための力にはなると思う」と話した。答えが長すぎたのか、ふーーん、そうなんだ、という反応。何が正解だったのかはわからないが、たまにこうして、全力で考えさせられる。そして、「よくわからないが、母が真剣に答えてたしな」という感覚だけ残ればいいなと思う。
さて、7月27日に6歳の誕生日を迎えた。前日はホテルに泊まっていたのだが、お庭を散歩していて段差があると「ママそこ気をつけてね」と言ってくれたり、部屋を間違えそうになったら「こっちだよ」と開けてくれる、お風呂から出たらサッとお水をくんでくれる、などなど、ずいぶんとお姉さんになってしまった。「まったくもう! こんなに優しい子に産んだ覚えはないーー!」と怒るのがマイブーム(笑)。どうかこのまま、彼女の芽にたっぷりと太陽と雨が注がれていきますように。 (ミュージシャン)
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