〈中倉彰子さんの子育て日記〉39・ホンモノに触れる

(2015年10月23日付 東京新聞朝刊)

バレーボール観戦

 長女のマイ(10)は、バレーボールに夢中。先日、一緒にVリーグ女子の開幕戦を見に行きました。なんと、マイの学校のクラブの生徒たちが、選手入場の際のエスコート役を務めることになったのです! 初めて見る選手たちは背が高く、身体ががっしりしていて、すごい迫力で圧倒されました。日頃から厳しい練習を積んでいるのでしょうね。

 練習を終えた選手たちが戻ってくると、それまで冗談を言い合いながら笑っていた子どもたちに緊張が走ります。その後は憧れの選手と一緒に手をつないでコートへ。子どもたちからは緊張感とうれしさがあふれ出ていました。大勢の観客からたくさんの拍手を浴びながら、エスコート役は無事終了しました。

 選手からサイン入りノートをもらい、満面の笑みで帰ってきたマイ。「手をつなぐ時が緊張したー」「いっぱい応援してねって言われた」とうれしそうに話していました。娘にとって一生の記念に残る素晴らしい体験。この日は私も、テレビでは味わえない「間近でホンモノを見る」体験をすることができ大満足。選手たちは凜(りん)としていて本当にすてきでした。

「いつつ」を起業

 子どもはいろいろな経験を積んで、好きなこと、夢中になれるものを見つけます。未来を担う子どもたちに私ができることは、やはり将棋の楽しさ、魅力を伝えることです。以前、この連載でもお伝えしたように、6月に神戸で子育てと将棋をテーマにしたイベントを開いた際には、子どもたちを前に私と(プロ棋士の)妹が着物で対局しました。食い入るように見入る子どもたちの瞳や歓声など反響の大きさには私も驚かされました。

 将棋には、勝ち負けだけではない価値がたくさんあります。「そのことを、もっと多くの子どもたちに伝えたい」との思いから、このたび、起業することにしました!

 会社名の「いつつ」は将棋の駒の五角形の「五」が由来。理念は「楽しく驚きにあふれたホンモノの日本の伝統文化を、世界中の子どもたちのすぐそばに」です。将棋も含め、日本の伝統文化には、まだまだ眠っている価値がたくさんあると思います。そうしたものを私自身も学びながら、女流棋士とママさん双方の目線で伝えることができたらと思っています。

 わが家は「ママの起業」という事件?で、普段のドタバタに輪をかけてドタバタしています。この先、わが家は一体どうなっていくのでしょう(笑)。(プロ棋士)