〈田中健さんの子育て日記〉35・できることの限界

(2018年6月29日付 東京新聞朝刊 )

田中健さんの子育て日記

写真

娘が校外学習の農業体験で摘果したリンゴ㊧と、お土産の牛革のしおり

 結婚して以来、家内には2カ月に1回程度、吐き気が続いて七転八倒する日があります。肩こりもひどい性質で、マッサージやはり治療を受けると、翌日にはすっかり改善されることもあれば、病院に連れて行くほどひどく苦しむこともありました。

 「白血球の数値は高いですが、他は異常なしです。脱水症状がひどいので点滴、検査入院しますか?」と促されて入院した経験が過去2回。そして6年前、大きな「発作」が起きて見つかった病気が虫垂炎でした。「10年近く盲腸の発作を起こしていたようです。手術で楽になりますよ。盲腸、干からびていました」

妻の「発作」

 この手術ですっかり改善されると思いきや、退院後の無理がたたり、腹膜炎に腸管の癒着…。振り出しに戻ったように、吐き気や七転八倒の生活が今も続いています。

 前回は、先月下旬の夜間にそのひどい「発作」が起き、小学5年生の娘も一緒に家族3人で病院へ向かいました。

 時折起きる腸閉塞(へいそく)ではなく、診断結果は「原因不明」。脱水症状がひどく、数年ぶりに点滴と検査入院となりました。朝は僕が娘を学校に送り出すことを請け合い安心したようでしたが、僕が地方にいたら帰宅したと思われます。

校外学習の荷造り

 実際、2泊の予定を「娘の校外学習の準備が気になる」と1泊で帰宅してきました。校外学習先は岩手県で、3泊して登山や農業・牧場体験をします。「宿泊の荷造り」は、子育ての中で僕ができない、また間違えて子どもや先生方に迷惑をかけそうなことの一つです。

 家内は、保護者会で持ち物と行程の説明を受けて、分からないところを母親同士で確認し、足りない物を買い足し、名前をつけ、子どもと荷造りをしていました。この一連の作業、まず僕は保護者会に出ておらず、「校外学習のしおり」を見ても分からないところが多々あります。パパ友に尋ねようとも、「荷造り」に関して即答してくださる方が思い浮かびません。

 家内は調子が戻らぬまま、登山に使うレインコートや軍手、帽子のゴムを買いに出かけます。軍手は子ども用が、ゴムの幅もいろいろあると聞き、間違えそうで「僕が行こうか」と言えませんでした。

 用意周到に力を尽くせばできることかもしれませんが、僕にとっては慣れない子育て分野。正直、1泊で帰宅してもらえて助かりました。僕ができることは限定されていると、あらためて感じています。(俳優・ケーナ奏者)

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