〈中倉彰子さんの子育て日記〉44・大会初勝利!

(2016年4月29日付 東京新聞朝刊)

やったね

 前回も触れましたが、先月、私が所属する日本女子プロ将棋協会が、地元の東京都府中市で「けやきカップ」という将棋イベントを開催しました。その中で子ども三人でチームを組む団体戦に、わが家の子どもたちのマイ(10)、マキ(7つ)、シン(5つ)と、マキの同級生(6つ)のお友達を入れた「いつつ星」チームが出場しました。

 まず予選。勝っても負けても3回指す事ができます。緊張気味のわが子たちはまるで借りてきた猫のよう(笑)。マイは、チームの中で一番強い子が座る大将の席。次将にマキとお友達が交代、三将の席にシンの順番で座ります。

 審判の私は巡回してみんなを見守ります。でも対局が始まるとやはりわが子が気になり、チラチラ。すると、シンがニコニコ顔で私の方を見ています。そう、うれしい大会初勝利です! 昨年11月の子ども大会では1回も勝てなかったのに。「やったね」という顔で返事しました。シンは対局相手を前に、うれしさを我慢しているような、でもにじみ出てしまうような、なんともいえない表情。でもその後、他の2人が負けてしまい、チームとしては、1勝2敗で敗退でした。対局カードには黒丸がつき、シンは「自分は勝ったのに」とちょっと不満そうです。

やる気スイッチオン

 会場ではマイ、マキと同じ保育所だったお友達や、ママ友とも1年ぶりに会う事ができました。互いの子どもの成長を見ることができるのも、うれしいものです。2回戦はマイとシンが勝ち、チーム初勝利で、またびっくり。私は大きな用紙に結果を書く役目だったのですが、「え? これ間違いでは?」と受付に確認に行ったほどでした。

 そして、3回戦ではなんと、シンだけが勝ちました。一番心配だったシンが、まさかの3連勝。感想を聞いてみると…「うれしかったんだけど、相手が『負けました』って言わなかったのが残念だった」。これには思わず噴き出しました。家では、「負けたら『負けました』って言わないとダメだよ」って、さんざん言われているものね。

 今回、1度も勝てなかったマキでしたが「シンが3回も勝ったんだよ」と興奮しながらジジに話している姿を見て、うれしく思いました。姉弟間の絆も深まったようで、参加させて良かったです。シンのやる気のスイッチが全開、毎日「将棋をやろう!」と言ってきます。来年は、予選突破ができるかな? (プロ棋士)