〈中倉彰子さんの子育て日記〉68・野球、アイドル…子どもを通して知る新たな世界

(2018年10月12日付 東京新聞朝刊)

 先月、シンが小学校の少年野球チームに入りました。野球をしているお友達に影響を受けたようで、夏休みに「やってみたい」と言い出し、体験期間を経て入部しました。

 「ママ、ずっと見てて」と、最初はグラウンドにいる私をチラチラと確認していましたが、しばらくすると楽しそうに練習するようになり、少しずつミットやバットなどをそろえていくのもうれしいようでした。

 ただ、練習時間は登校時間より早く、起きるのもギリギリ、着替えるのもグズグズ。何度も遅刻し、監督から「1人遅刻するのがいると士気が下がる。おまえも選手の1人なんだから」と指導されました。「選手の1人」という言葉が自覚を芽生えさせたのか、シンは、翌日の夜から早めに布団に入るように。私が言うより、はるかに効果てきめんでした。

 親の仕事もあります。先日は初めて「試合当番」をしました。ペアを組んだママさんに頼りつつ、試合中の審判へのお茶出しなどをします。まだ勝手が分からないので、早く慣れたいものです。

 私は野球にまったく興味がなく、何人でやるスポーツなのかもあやふやでした。不思議なもので、わが子がやるようになると興味が湧くものですね。シンはまだユニホームもなく、ベンチで応援するだけですが、試合に出られるようになったら、私もすごく楽しいだろうと想像しています。

 将棋教室の生徒さんのお母さんも、こんな気持ちなのかもしれません。ほとんどのお母さんが「子どもが将棋に興味を持っているのですが、私はまったく分からないので…」とおっしゃいます。未知の世界だったけれど、子どもが興味を持ったことをきっかけに、自分も少し興味を持ち始めた方もいるかもしれません。少しでも知識があると、子どもと一緒に楽しめるかも。今度、お母さんのための将棋入門講座を開こうかな。

 長女マイと次女マキは「TWICE(トワイス)」というアイドルグループに夢中で、家ではTWICEの曲が流れたりポスターが貼ってあったり。元気がでる曲が多いので、私も車で1人で乗る時にかけています。

 自分だけだったら縁がなかった世界を、子どもを通して知ることができるのも、子育て中ならではの良さかもしれません。(プロ棋士)