〈奥山佳恵さんの子育て日記〉49・長男が「家を出ます」 母として揺れる気持ち
大学最後の年に宣言
大学生(長男)の春休みがこんなに長いとは。実体験としてこの春で3回目となりましたが、いまだに慣れなくて驚いてしまいます。自分のことだけに使える青春の自由時間。とはいえ、真夜中の3時に大笑いし、起きてきたと思ったらバイトへと飛び出す生活を送る彼とは、同じ屋根の下に住んでいるというのに顔を合わせる時間が本当に減っていました。
だからでしょうか。大学生最後の年となるこのタイミングで「家を出て一人暮らしを始めます」宣言を聞いた時も、「それが自然の流れですよね」と受け止められました。実は「家を出ます」は前々から言い出しては頓挫していた案件で、私は「出ます出ますサギでは」くらいに思っていたほどだったので、ようやくの実現です。
これまで自宅に自室というものがなかった長男。私も同じ環境で育ったので、家を飛び出し初めての「自分の城」を築けた時のうれしさと興奮と少しの不安を今でもハッキリと覚えています。思い出すのは、いざ一人で生活を始めてみての大変さ。ひとつひとつの家事に向き合っていたら、真夜中の3時にセーターを手洗いしている現実にがくぜんとしました。私はいったい、いつになったら家事を終えて眠れるのかと!
4月からの彼の真夜中の3時は、もしかしたらこれまでとは違った景色になるのかもしれません。そしてそれこそが独り立ちをする上で学びになるのだと、母としてというよりも人生の先輩として思っています。
今ならやっとわかる
先日、長男と同じ保育園に通っていたママ友から衝撃の近況を聞きました。すでに一人暮らしを始めているという息子さんの家へ「冷凍庫におかずを入れに行っているの」なんて言うのです! 「そんなことしちゃだめ、彼には彼の人生がある、あなたはあなたの人生を生きて」と生意気にも思わず鼓舞してしまいました。「ありがとう!」と言ってもらえたけれど、私だって今後、独り立ちをした長男とどんな関係を築いていけるのかはまったくの未知数です。
ついさっきも、長男が大好きな巨大焼きそばをスーパーで見かけたので、反射的に「これいる?」と連絡してしまいました。「いらないかな」の返事を寂しく感じたとき、「もう食べないの?」と、満腹だと言っているのに何度も聞いてきた実家の母を思い出しました。今ならやっとわかる気がします。お母さんはいつも、こんな気持ちでいてくれたのね。
奥山佳恵(おくやま・よしえ)
俳優・タレント。2011年に生まれたダウン症の次男を育てる。長男はすでに成人。