いじめ根絶に児童80人結集! 葛飾区立よつ木小 休み時間に教室を巡回
設立メンバーは16人 次々に「僕もやる」
「他校では、いじめが起きている学校もあります。みんなで楽しい学校にして、よつぎ小から、いじめをなくしていきましょう」
2月下旬、体育館であった朝礼。おそろいの赤いハチマキをした4~6年生の男女16人が舞台から、呼び掛けた。16人はパトロール隊のリーダーとなる設立メンバーの児童。他の全校児童370人は、立ち上がった同窓を憧れのような表情で見つめていた。「僕もやる」。3月にメンバーを募ると、下級生を中心に続々と手が挙がった。
校長もビックリ 子どもたちの自主性
結成のきっかけは一昨年。工藤洋巳(かずみ)校長が前任地の辰沼小に校長として赴任した際に、実践されていた取り組みに触れ、児童らの自主性に驚いたことだった。
辰沼小では12年、全校児童の4割に当たる200人でつくる「辰沼キッズレスキュー隊」が結成された。5班に分かれ、毎日交代で2時間目と3時間目の間の中休みに校内や、先生の目が届きにくいトイレなどを巡回。いじめの相談を受けたり、友達をたたくなどのささいなけんかがないか見回ったりした。問題があれば、その場で当事者と話し合って仲裁。児童だけで極力、解決を試みてきた。
被害者は大人に言えない。子どもの視線が必要
構築したのは当時の校長で、現在はいじめ相談などに応じる一般社団法人「ヒューマンラブエイド」共同代表の仲野繁さん(64)だ。「きっかけは大津市の中学校であったいじめ自殺。発覚した12年の夏休み明け、児童会長らといじめ対策を話し合うと、子どもたちから『いじめが起きない学校をつくりたい』という声が上がった」と振り返る。
一緒に頭をひねり、「いじめられている子は、『弱い自分』を親や教師に知られてしまうと思って大人に言いだしにくい。大人が決めるのではなく、子どもの視線を採り入れた予防策を考える必要があった。子どもは子どもからの批判を一番気にするので、いじめている子が数的に不利だと分かるような大規模なパトロール隊を作った」という。
5年生メンバー「1年生の弟もいじめられていた」
意欲を維持するために、メンバーには特別な名札や会員証を配布してグループの価値を高めた。一緒に連れて回るゆるキャラもメンバーに考えさせ、楽しみながら活動できるようにした。仲野さん退任後の17年度に校長として着任した工藤さんは、すっかり軌道に乗った取り組みを体感。感動し、18年度から着任したよつぎ小に導入した。
児童の意欲は高い。メンバー募集のポスター作りなどに精を出した6年生の椎尾律人君(12)は「よつぎ小をもっと良い学校にしたい」。5年生の関口ハル君(11)は「1年生の弟が友達からいじめられていた。日本全国からいじめがなくなるよう頑張る」と鼻息が荒い。5月連休明けから本格巡回を始めるといい、東京の下町から、いじめ根絶に向けた児童の自主警ら隊が全国に広がろうとしている。