新型コロナの一斉休校で給食向け農家がピンチ 収穫体験、通販、半額セール…工夫で乗りきる!
「半月前に言ってくれれば…でも悪いのはウイルス」
「せめて半月前に言ってくれれば、もう少し準備できたけど」。東京都江戸川区の特産品、コマツナを栽培する小原英行さん(41)は突然の休校に苦笑する。
25アールの畑地に立つビニールハウスには、芽を出したばかりの株から、出荷を控えた高さ30センチほどの株まで、大小さまざまなコマツナが育つ。区内の中学校のほか都内四つの給食食材業者に毎月約3トンを出荷、売り上げのほとんどが給食向けだ。
葉に付きやすい虫は最小限の農薬で排除、収穫時期を計算して天候や季節の影響なく児童・生徒に供給できるよう丹精を込めたコマツナ。休校の知らせにショックを受けたが、すぐ「悪いのは新型コロナウイルス」と気持ちを切り替えた。
現時点でコマツナ廃棄ゼロ 種をまき、収穫を待つ
小原さんは、コマツナを畑から引き抜き、泥を落として袋に詰める「小松菜狩り」の参加者を1日から募集。会員制交流サイト(SNS)経由の通信販売も始めた。やむを得ずコマツナを廃棄した知人の農家もあるが、小原さんは現時点で廃棄していない。
こうして給食休止を乗り切る算段を整え、新年度に希望を抱く。「あのあたりは種をまいたばかり。4月に収穫できると見越してね」。まだ芽も出ていない畑を期待を込めて見つめた。
こうした給食食材のだぶつきは全国共通。少しでも食品ロスを減らそうと、愛知県一宮市では2日、小中学校の臨時休校で使わなくなったダイコンやニンジンなどの即売会が開かれた。
首都圏の給食用牛乳1日500トン 生乳捨てる例も
食料消費に詳しい東京農大の大浦裕二教授は「農家の生産は計画的。急に給食がストップすれば、販売ルートが少ない農家は対応に困る。給食に欠かせない牛乳も、厳しい対応を迫られている。国は、台風などの災害時と同様の補償制度を設けるべきだ」と話す。
首都圏の酪農家2500戸の牛乳を受託販売する関東生乳販売農業協同組合連合会(東京都文京区)によると、関東地方で給食に出る牛乳は1日約500トン。搾乳を休むと乳牛が体調を崩しやすく、流通が滞ると生乳を捨てるケースもある。
「夏休みなどの長期休暇では、工場の人員を整え、バターや脱脂粉乳へ計画的に加工する。今回は準備できなかった」と同連合会の担当者。給食の牛乳も紙パック化が進み、スーパーなどでの販売増に活路を見いだす。「休校中にも、子どもたちには栄養価の高い牛乳を飲んでほしい」と呼び掛けている。
ローソン、9~20日に「ホットミルク」半額65円
ローソンは9日から20日まで、国内産の生乳を使った「ホットミルク」を半額の税込み65円で提供する。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小中学校の休校で、給食に使われる牛乳の消費が減ることから、需要を喚起して食品ロスを減らす狙い。「カフェラテMサイズ」は30円引きの同120円とする。
ローソンのチェーン名は米国のミルク店にちなんでおり、看板に牛乳缶のマークが使われている。