男子たち、生理のこと何でも聞いて。医師夫妻の本当に役立つ性教育 「避難所でナプキン配って」「服に血が付いてる子がいたら?」
ナプキン、タンポン、月経カップ…支援物資どう配る?
夫妻は、産業医みさとさん(38)と病理医たかおさん(38)。「アクロストン」のユニット名で、2018年から親子向けの性教育活動を本格的に始めた。「思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(主婦の友社)の著書もある。
「震度7の地震が起き、多くの人がこの体育館に避難しています。この紙袋の中の物を必要な人に必要な分だけ配る手伝いを頼まれました。どうしますか?」
昨年7月、東京都内の小学校で5~6年男子約70人を対象に行った講座。8班に分け、生理用品入りの紙袋を渡した。中身は班ごとに違い、ナプキン1袋、タンポン1箱、月経カップ1つのどれかが入っている。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の避難所で、支援物資の生理用品が適切に配布されなかったこともあり、企画したという。
「こんなに大変なんだ」一生懸命考えて悩むことが大切
男子たちは生理用品の説明書を手がかりに考える。「何でも聞いて」との2人の呼び掛けに、徐々に質問が出始める。「1個いくらするの」「タンポンを入れると痛くないの」「月経カップは再利用できるの」
ナプキンを手にしたある班は「5時間に1度交換するとすれば1日5個必要。生理は5~7日間続くとして必要なのは25~35個」と計算した。男子からは「1回の生理でこんなに必要なんだ」「結構お金がかかるね」と驚きの声が上がった。
みさとさんは「ナプキン交換の頻度は2~3時間に1回がいいとされるが、大切なのは正解を出すことじゃない。分からないことは聞き、一生懸命考えて悩むこと」と話す。
誤解…「セックスすると初経」「コントロールできる」
教育現場では、子どもたちが生理を学ぶ機会は限られている。小学校では初経や精通を、中学校では排卵の仕組みなどを各2時間かけて学ぶが、体の仕組みの話が中心。生理用品の使い方や生理痛などのケアについては、女子のみに教える学校が大多数だ。
たかおさんは「実態を知らないせいで男子が『生理=エロいこと』と誤って結びつけたり冷やかしたりすることで、つらい思いをする女子もいる」と指摘。学ぶ機会が乏しかった男性の中には、「排尿・排便のように生理もタイミングをコントロールできる」「セックスをすると初経が来る」などと誤った認識を持つ人もいるという。
「最低限の知識」を学校で教える時間が必要です
では、どうしたらよいのか。みさとさんは「本当は家庭で小さい頃から、トイレやお風呂で話していくとよい」。ただ、親子関係や家族構成にも左右されるので、最低限の知識を学校で教える時間を設けることが必要という。
おすすめは役割を決めて演じる「ロールプレイング」。例えば「白い服に赤い血が付いている子がいる。どうする?」と設定し、班内で本人役や周りの子役を割り振り対応を考えてもらう。たかおさんは「男女の立場を変えて演じれば、相手の気持ちに配慮するきっかけにもなる」と話す。
約1カ月の周期で、女性の子宮の内側を覆う粘膜がはがれ、血液とともに体外に排出されること。月経ともいう。初めての月経のことを初経(初潮)という。
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