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コンドーム、ピル、性感染症…中学生に伝えたいセックスのこと〈前編〉都教委モデル授業から

 東京都教育委員会が28日に公表した「性教育の手引」では、学習指導要領の範囲を超えた内容も含めた授業のあり方を示しています。都教委は昨年秋からモデル授業を5つの中学校で実施。八王子市の都立南多摩中等教育学校の授業を取材しましたが、産婦人科医の長岡美樹さんが、男女の体のことや性交、避妊、性感染症などについて具体的に伝えるとともに、自立とは?生きるとは?といったテーマにまで言及していたのが印象的でした。大人も知っておくことで、子どもと向き合うヒントになるのでは…。授業の内容を報告します。

「正しい知識を持ってほしい」と性教育のモデル授業に取り組む長岡美樹さん=東京都八王子市で

「本当に大切なこと」を伝えます

 「先生は説教するつもりもないし、難しいことを押しつけようという気持ちはさらさらない。本当に大切なこと、誰にも教えてもらえないかもしれないけれど、知っていてもらいたいことです」。長岡さんはこう呼びかけて授業を始めました。長岡さんは、渋谷区の宮益坂メリーレディースクリニックで院長を務め、主に高校生を対象に性教育に取り組んでいます。

 長岡さんは真っ先に性の多様性に言及しました。「LGBTなど性的少数者とか、男とか女とか、授業するとみんなの中には居心地が悪いと思う人、気持ちをもやもやさせる人が確実にいると思います。先生はどっちだって良いと思ってます。みんなは生き物として生まれてきて、男でも女でも中身はどっちでも、その人らしく生きていければいいなと思っています。そういう立場で話しているつもりですが、機能特性、持って生まれてきたものはそれぞれの機能があるので、それぞれ科学的に、理科として、受け止めてくれたらいいなと思っています」

セックスと「子孫を残す仕組み」

 「初体験っていつがいいのかなと誰しもちょっと考えたりすると思います。セックス断ったら嫌われちゃうかな?とか。特に日本の女の子はNOと言いにくい性質があるみたい。セックスしてみたい気持ちもあるけど、病気や妊娠が心配、ということもあるでしょう」

 こう語りかけて、生徒たちを引きつけた長岡さん。「女子は生理がきて、男子は射精を経験すれば、子孫を残す力ができたということ。年齢が若くても、経済力がなくても、子孫を残す力ができているんだよということは自覚しなきゃいけない。子孫を残すための仕組みを持っているんだ、ということを頭に入れておいて」と力を込めました。

  • 人間の赤ちゃんがおなかの中にいるのは約10カ月
  • 女の子の体には子宮と卵巣がワンセットである
  • 精子が中にお迎えにいって、卵ちゃんと出会うと、受精が起きて、戻ってきて着床、子宮にくっついたら妊娠が成立すること
  • 流産など途中で駄目になり出血することもある

 こうしたごく基本的な知識も丁寧に伝えます。

 そして、何億個という卵をばらまくサンゴや、カメの産卵を例に出しながら、セックスして、おなかの中で赤ちゃんを育てる人間の在り方は「子孫を残すために編み出した一番確実な方法だということを、へーっと思ってほしい」と話しました。

「想定外の妊娠」に直面したら

 次に長岡さんが話したのは、想定外の妊娠、望まない妊娠に直面した場合のこと。「4月1日にセックスすると、クリスマスには生まれます。生理がこないのはおかしいなと思っても、『でもいつも不順だしな~』とぼやぼやしてると、もうおろせない時期がきちゃう」。母体保護法により、妊娠21週を過ぎれば、医師が堕胎をすることはできないことを説明。「知識がないことは恐ろしいことです。お願いですから自分の生理の日は必ず覚えておいてください」と呼びかけました。

 そして、「真面目に付き合っている2人ほど、産みますといいます。若いから産むなという話じゃなくて、ちゃんと状況を考えて、支えてくれる人がいて、責任を取れるということであれば構わない。どっちが正しいか正しくないかじゃなくて、どちらが自分たちにとって幸せなのか、よく考えて選択してほしいと思います」と語りかけていました。

コンドーム、ピル…避妊の知識

 「ネットで『コンドーム 岩室紳也』と検索してみて」。避妊について長岡さんが紹介したのは、コンドームの正しい知識を伝えようと取り組む泌尿器科医・岩室紳也さんのサイトです。

 排卵を抑えて妊娠しにくくする避妊用ピルについては、「ネットなどで買わず、必ずクリニックに相談して」と助言。避妊だけでなく生理痛を和らげたり、生理の日をコントロールする目的でも使われていることを説明し、「生理のことで困っていたら、恐れることなく産婦人科に相談してほしい」と呼びかけました。

 話題は緊急避妊用ピル(アフターピル)にも及びます。「そういうことがあってから72時間以内に病院にたどり着いて。これで絶対大丈夫というわけじゃないけれど、飲むことで妊娠を避けることができるかもしれない薬です。値段は高いですが、ネットで買うと危ないので、必ず病院に行ってください。覚えておいてね」

性感染症にかからないために

 若年層にも広がる梅毒や淋病(りんびょう)、クラミジアなどの性感染症。日々、診察する立場から「普通の暮らしをしている人の間にもすごく広がっているんだな、大問題だなと心配しています」と語った長岡さん。「性感染症は、血液や粘液、精液、唾液など水があるところで感染する。妊娠しないから喉なら大丈夫、というのは甘いです」とオーラルセックスにも危険が潜むこと、将来不妊症の原因になり得ることも指摘しました。

 そして、「たくさんの人と経験すればたくさんの感染機会があるのは当たり前。今の人とは真面目に付き合っても、その人の前の前の前の前の人のことは調べることはできません。いつでもどこでも誰にでもリスクがあることをわかってください。何しろコンドーム。性感染症を防ぐにはコンドームしかない。男子はコンドームはマナーだと思って。女子も関係ないと思わないで、使わないセックスにはNOという勇気を必ず持つようにお願いします」と伝えました。

病院はいくらかかるんだろう?

 長岡さんは、「困ったら病院に相談を」と呼びかけるだけでなく、受診に必要な情報も具体的に教えていました。

  • 保険証が必要なこと
  • 初診料と検査は2000~3000円
  • 保険証を親から借りられない場合は正直に話してもらえば、必要な処置や治療を提供すること
  • 症状が出て2週間たって治らなければ受診を
  • 治療は1対1の関係の中でするので、怖がらないで

◇後編はこちら

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