10代の性知識に危機感 アダルトグッズ会社が性教育サイト、 助産師が動画配信 性的同意の大切さも

(2020年4月10日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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「シオリーヌ」の名前で、性の知識について解説する大貫さんのYouTubeチャンネル

 ネット上にあふれる性に関する情報にスマートフォンで簡単にアクセスできる時代。子どもたちが性暴力を肯定するようなアダルトサイトや、科学的に誤った知識に触れてしまう危険性が高くなっている。そんな時代だからこそ、ウェブサイトや動画を活用し、正しい知識や性の大切さを伝えようとする取り組みが広がっている。 

「セックスは何歳からしていいの?」 

 「セックスは何歳からしていいの?」「彼氏から裸の写真を送ってと言われた」「ガマン汁で赤ちゃんはできますか? 射精しなければ避妊できますか?」

 中学生、高校生向けの性教育サイト「セイシル」には、主に10代から、性に関するさまざまな悩みが匿名で寄せられる。

 「ガマン汁」の質問には、泌尿器科医で聖隷浜松病院(浜松市)リプロダクションセンター長の今井伸さんが回答。「ガマン汁」は射精前に尿道に分泌される尿道球腺(カウパー腺)液の俗称で、「ガマン汁には精子はないけれど、射精が近づいているサイン。コンドームをつけないと、(尿道に精液がしみ出し)妊娠する可能性がある」と解説する。

質問や悩み自由に投稿→専門家が回答

 セイシルはアダルトグッズ販売「TENGA」のグループ会社「TENGAヘルスケア」(東京)が昨年12月に開設。男女の体の仕組みや避妊、性感染症、マスターベーション、多様な性、性暴力など性に関する幅広いテーマを扱う。

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中高生の性の悩みに専門家が答える「セイシル」。スマートフォンでも利用できる

 冒頭の「モヤモヤ相談室」は自由に質問や悩みを投稿でき、若い世代に共通するものについて産婦人科医や泌尿器科医、臨床心理士など全国の29人の専門家が回答。現在、約50の質問と回答がそろい、順次増やしている。

若い世代の性知識の乏しさに危機感

 同社が過去に10代向けの女性誌と共同で性に関する相談を公募したところ「コーラで膣(ちつ)を洗えば、避妊できるって本当?」などと驚くような質問が寄せられ、若い世代の正しい性知識のなさに危機感を持ったことが開設のきっかけ。自身も大学時代に妊娠、中絶の経験があり、若者への性教育に取り組むNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さん(34)の協力で運営する。

 サイトの担当で、助産師でもある同社の古川直子さん(34)は「性の悩みは親や友達に聞きづらい分、ネットの情報に頼りがち。だからこそ、同じネット上で正しい知識を伝えたい」。

助産師シオリーヌ YouTubeチャンネルに10万4000人

 首都圏を中心に活動する助産師の大貫詩織さん(28)が性の知識を解説する動画も注目を集める。「コンドームの正しい着け方」や「避妊に失敗した時の対処法」といった具体的な知識を分かりやすく解説。性行為の前に互いの意思を確認する「性的同意」の重要性なども伝える。

 「シオリーヌ」の名前で昨年2月から、動画投稿サイトYouTubeで約150本を配信。YouTubeの大貫さんのチャンネルには10代を中心に10万4000人が登録している。

 助産師として多くの女性たちと接する中で、十分な知識がなく望まない妊娠をしたり、性と生殖に関する健康に関心を払わずに育っってきたりした若い女性が多いことに気づき、早期から性の知識を身に付ける大切さを痛感。3年前には思春期の子どもをサポートする民間資格「思春期保健相談士」を取得し、小中学校での授業などもしてきた。

背景に日本の遅れ 「自然に学べばいい」ではダメ 

 これらのサイトや動画が注目される背景には、日本の性教育の遅れがある。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の性教育に関する指針では、幼少期から成長に応じた知識を教えることを推奨。だが、日本では中学校の学習指導要領で、性行為や避妊など「妊娠に至る経緯」は取り扱わないと定められ、学校でも十分な性教育ができていない。

 大貫さんは「正しい知識のないまま、子どもたちに不適切な情報が簡単に渡ってしまう。『自然に学べばいい』ではなく、家庭や学校で大人がきちんと子どもたちと向き合うことが大事」と指摘する。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年4月10日

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