〈奥山佳恵さんの子育て日記〉16・君ならきっとできるよ! ダウン症の次男が「はじめての下校」に挑戦
登下校の付き添いが日常だったけれど
キッカケは、ギックリ腰でした。
ダウン症のある小学3年生の次男、美良生(みらい)は現在、先生方やお友達、多くの方のサポートを受けながら、地域の小学校の通常学級に在籍しています。入学前から「通級するために必要な工夫は何か」と知恵を出し合う面談の席を設けていただき、スタート時から留意していたのが、登下校の配慮でした。
学校が第一に考慮してくださるのは「安全面」。私たちももちろん、1人で外を歩いたこともない息子をいきなり「いってらっしゃい」とは送り出せません。登校の付き添いは、美良生を愛する夫が喜々として担当し、下校は私。それは当たり前の日常となりました。すっかり定着したこのリズムに異変が起きたのは、この秋のこと。夫が突然、ギックリ腰になったのです。
「行けない」決めつけていただけかも
「う、動けない」。イレギュラーな出来事に戸惑ったのは美良生。実は、これまで美良生のペースを重んじて学校へ向かっていたため、遅刻がちに。「何とかしないとね」と考えていたところ、急きょ私の担当になったわけで。加えてその日に限って、美良生は日直当番! 急がないと!
美良生を急(せ)かし、並走してダッシュ。なんだ、行けるじゃないか。やってみて、促して思った。行ける。美良生は1人でも学校に行ける。私たち大人が「行けない」と決めつけていただけではないだろうか。入学以来、初めての気づきでした。
確信を得たかったので、下校時、今まで当然のように教室を出た時から家までつないでいた手を、あえて初めからつながず、その代わりまっすぐ目を見て笑顔で言ってみた。「美良生、1人で帰っておいで」。美良生ならきっともう、できるよ。
後ろから見守る「距離」を長くして…
それを受け、「わかった」と1人で歩き出したのは息子。言えばできた。やってみたらできた。それでも心配なので距離を保って後ろから付いて行く。付いてきているのが見られないように。後追いして見守る私の姿に、同級生たちに「はじめてのおつかいみたいだね」と笑われる。それ、あながち間違ってないよ、今、彼は「はじめての下校」にチャレンジ中なんだから!
学校側と相談し、今後は次の段階として、後ろにいる「距離」をさらに長くすることにしました。1人で下校して、ただいまと帰ってくる日まではもうすぐ! ドアで「おかえり」と迎えた瞬間を想像しただけで、今から私は涙目です。(女優・タレント)
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