「オンライン授業で質が低下」日大の学生が学費返還を請願 大学側は応じず「いかなる理由があっても」

山中正義 (2020年10月31日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた学生による学費減額運動が広がる中、日本大国際関係学部(静岡県三島市)の学生も10月、授業がオンラインに変わり質が低下したとして授業料の一部返還(減額)を求める請願書を大学に提出した。大学は要望に応じなかったが、学生は「地方からも活動を広げないと国も動いてくれない。行動は続ける」と話す。

コロナ禍で困窮する学生への支援を求めて大学に請願した隆弘道さん=静岡県三島市で

質問に回答なし 教材映像だけ

 同学部2年の隆(たかし)弘道さん(20)は9月中旬、インターネットで同大生を対象に、コロナ禍で困っていることなどを問うアンケートを実施。経済的不安を抱える学生が多いことを知り、「誰かが行動しないと」と立ち上がった。

 隆さんによると、授業が対面式からオンラインになってから、質問しても回答がなかったり、教材の映像を流すだけのことがあった。後期から対面式が一部で再開したが、まだオンラインが多いという。

 「今は学びたくても教えてくれず、大学の授業ではない。お金の払い損で割に合わない」と憤る。図書館など学校施設の利用も制限され、学費に含まれる施設設備資金を支払うことにも疑問を感じた。

ツイッターなどで790人の署名

 請願書は10月8日、ツイッターなどで集めた国際関係学部や県外にある他学部を含む計790人の署名とともに日大本部(東京)に提出。「授業の内容が料金に見合っているとは言えない。満額を支払うことは不合理」などと主張し本年度の授業料の一部返還(減額)を求めた。オンライン授業で発生する通信料の負担なども要望した。

 これに対し、大学側は10月22日付で回答。既納の学費はいかなる理由があっても返還しない、という学則規定に基づき、応じない考えを示した。施設設備資金への意見には、施設の利用料ではなく、教育環境を整えるために必要なものとして理解を求めた。通信料は各自の負担とした。

 大学はこれまで、オンライン授業実施に際し、通信環境を整えるため学部生らに一律3万円(総額約21億円)を支給。困窮学生には奨学金を給付するなどした。

「同じ思いの学生は問題提起を」

 大学は取材に「学生と教職員の健康・安全を第一に、授業運営を滞りなく進め、学生の学修機会を確保する」と説明。「前学期に(独自の奨学金に)応募できなかった学生や家計が急変した学生などを対象に、再び募集を行うべく検討しています」と追加の支援策を講じる可能性に言及した。

 隆さんは大学の回答に「もっと具体的に示してほしかった。がっかり。何も変わらなかったのはくやしい」と吐露。「同じ思いの学生がいれば、行動して問題提起をしてほしい」と呼び掛けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月31日