少人数学級は公立小のみ「35人」で決着、来年度から全学年で 中学は40人維持も「大きな一歩」
文科省の目標届かず「財務省の壁が…」
「隣の建物(財務省)の壁は高かった」
萩生田光一文科相は17日、閣僚折衝後の記者会見で複雑な表情を見せた。来年度から1人1台のパソコンやタブレット端末が配備され「きめ細かな指導が必要」と訴えてきたが、35人学級の対象となったのは小学校のみ。目標の「30人」も届かなかった。
児童生徒に目が行き届く少人数学級は教育界の長年の悲願。だが、財務省は「効果の検証がない」と否定的。1980年度に上限が40人となって以来、学級規模の一律引き下げは実現していない中、「教育効果が上がることはあっても、下がることはないと訴え続けたが、最後まで溝があった」(文科省初等中等教育局財務課の担当者)。今回も困難との見方もあった。
コロナで議論加速 だが課題は山積み
新型コロナウイルスの感染拡大で、議論が加速した。全国一斉休校再開後の分散登校を経て、「3密」対策としても現場の要望が高まった。与野党や全国知事会も後押しし、最終的には国の追加支出がほぼない折衷案で財務省が折れた形となった。「政策で負けたが、財政の影響はほとんどない」と財務省の幹部。一方、文科省の幹部は「今回を逃したら厳しいと思っていた。ひと言で言えば『良かった』」と安堵(あんど)感を隠せなかった。
だが、教育現場の課題は山積している。少人数学級で必要となる教室が増え、足りなくなるとの指摘も。文科省は「国と地方が連携し、定期的に検証する場を設ける」とし、5年間で柔軟に35人学級に移行するとしているが、都市部の学校などで教室不足が顕在化する可能性もある。
教職員不足では教育・労働環境が悪化
質の高い教員の確保も課題。教員の業務が増え、長時間労働が指摘される中、志望者が減り、教員不足になる悪循環が続いている。小学校教員の採用倍率の全国平均は2019年度、2.8倍まで下がっている。
慶応大教職課程センターの佐久間亜紀教授は「教職員全体の人手が増えなければ、教育・労働環境の改善につながらない。注視が必要」とくぎを刺す。教務主任など学校全体の仕事をするために担任を外れている教員が急きょ担任に入らざるを得なくなり、現場の負担が増すケースなどが想定されると指摘。「不安定な非正規雇用の割合に上限を定めるなど具体的な対策を盛り込んだ義務教育標準法改正が求められる」と強調した。